隠しフロア?

「……どこだここ」


目覚めたら知らない天井が視界に映った。


「お、起きましたか!?」


「え...?誰?」


本当に知らない女の人が居た。本当にだれ?って俺何してたんだっけ。


夢を見ていたんだ。…誰かの夢を。


「お兄さんが助けてくれなかったら私たち…っ!!」


……え~っとなんだっけなぁ…。


「ちょっと待ってくれ。起きたばっかで記憶が薄いんだ」


「ご、ごめんなさい...。でも本当にありがとうございましたっ」


その目じりには涙が溜まっている。本当に俺に感謝しているらしい。


…思い出せん。なにが俺にあった?俺がこの子に何をした。


「アルマを助けてくれて…本当に…っ!!」


アルマ…アルマ…アルマ…。


……………………………………って!!!あのカマキリ!!どうなった!?


ようやく記憶が戻り始めた。


「キミが無事って事は皆無事そうか」


「はいっ…お兄さんのおかげで皆助かりました」


「あのカマキリのドロップアイテムってどうなったか分かる?」


俺にとって一番重要な事。それはあいつのドロップアイテムだ。あんだけ強かった相手の素材なんだ。十分期待できる。


「あ、多分お兄さんのマジックポーチに入ってると思います」


よし...なら良いか。


これからどうしようか。ここは多分ダンジョンの外にあるシーカー専用の医療施設だろう。


ここからダンジョンに戻るか...もう帰るか。


ガン爺から頼まれた”火山の結晶”はまだ手に入っていない。


「つつ…背中は…治らねぇよな」


【絶望の断鎌ヴェル=シン=サイズ】に付けられた裂傷は未だに俺の体を蝕んでいる。


血は止まっているが…あいつの干渉の力と俺の干渉の力が未だに鬩ぎ合っている。


「どうお礼をしたらいいか…」


「礼なんて良いよ。あの二人が無事だったらそれで良いじゃないか」


寧ろ仲間の為に死地に再び戻った事も評価してあげたい。そのチームワーク、友情。どれも俺には無い尊いものだ。大事にして欲しいな。


「でも…」


ダンジョンに戻るか。これでガン爺の所に戻っても武器が打てない。”火山の結晶”だけでも持って帰りたい。


激しく戦うのは無理だが…あのレベル帯なら今の俺が苦戦する事は無いんじゃないか。


ー----------------------------------


小鳥遊帳 【光輝なる民(人族)】  lv 500 


体力:30000


魔力:40000


筋力:15000


敏捷:15000


知力:3500


運 :3500


スキル一覧


古代語 LvMAX、剣術 Lv10、身体強化 【煌】、エルドラドの瞳【封】、【光輝共鳴オウリス・リンク】、【光輝変換オウリス・コード


称号一覧


【光輝なる民】、黄金郷の踏破者、記憶を紡ぎシ者【封】、【赫輝】屠りし者、因果から外れし者


絶望の断鎌ヴェル・シン・サイズ】屠りし勇者


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【光輪】の能力を使用することは出来ないが、ステータスの暴力で何とかなるだろう。


そもそもの話、逃げることが出来ればそれでいい。


奴との闘いはそれほど激しかった。暫くは強敵と戦う事は出来ない。


「じゃあ俺ダンジョンに戻るから。あの二人が目覚めたら寄り添ってあげなよ」


そう言って俺に繋がれている医療道具を全て振り払う。


「えっ!?そ、その体で無茶です!」


「大丈夫大丈夫。戦う気は無いから」


鉱石を取りに行くだけ。ただそれだけだ。





カァンッ!カァンッ!


ピッケルと鉱石が衝突する音が響き渡る。


「全力で駆け抜けて来たぜ…」


そう今は”火山の結晶”が手に入るフロアまで来た。やっぱこのフロアは人気なんだろうな。至る所に採掘跡がある。”火山の結晶”は装備を作る際に非常に有用な素材だ。装備の更新を求めるシーカーにはこのフロアは神の如き場所だろう。俺も例外ではない。


「ふぅ…これで”火山の結晶”は十分だろ」


これ以上採ってもだな。それに…俺にはやりたい事がある。


「ぐへへ…”隠しフロア”…探す時が来たようだ!!!!」


そう。”隠しフロア”の探索である。


ある程度やることは決まっている。このダンジョンを攻略するにあたって、このことを考えながら攻略してきた。まあカマキリは例外だけどな。あいつはイレギュラー過ぎた。


「予想はしている。情報データベースに乗っているマップ」


このダンジョンのマグマはある”一点”に向かい流れている。それに…”不自然な空白”。


この滝つぼの奥。そこにスペースがある。だが、マグマによって邪魔されて誰も到達できなかった。


「だが……【身体強化煌】」


【光輝盾鱗(オウリス・アイギス)】があれば展開して抜ける事も出来るけどな。今は【光輪】が破損している以上使えない。


ならば【光輝】の魔力で覆えばいい。マグマの熱なんかに負ける訳無いよな?信じてるぜエルドラド。


ゆっくりと滝つぼに向かい歩みを進める。


マグマ溜まりに足をつける。


「熱いが…何とか耐えれる」


読み通り。後はこのマグマの海を進んでいくだけ。


「動きづらいな…」


マグマの中は水なんかとは違い、しっかりとした質量を孕んでいた。


後はあの滝つぼを超えるだけ。


マグマの滝が圧倒的質量を含んでが流れている。あの堕ちるマグマを搔い潜り、中に入る必要がある。


「うひょ~滝行レベル100みたいな感じだな」


ドバドバと流れるマグマが俺の全身にぶち当たる。


「あちち」


それで済むならマシだと言うモノ。本来ならば消し炭になっていてもおかしくは無い。


こんな所誰も来やしないのだから。


そしてマグマの滝を超えたその先にあったもの。


何もない空間。だが、一つぽつんと石碑だけがあったのだった。

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