精霊の少女イグナリア

《汝、契約せし。かの精霊、女王になりたし》


はぁん?かの精霊ってなんだよ。王になりたいだぁ?勝手になっとけってんだ。


『今私の悪口いったでしょーっ!!!』


「うおぉぉぉ!!!吃驚した!?」


何処からともなく声がする。なんかガキっぽい声だなぁ…甲高いし。


『ガキっぽいですって!?不敬よっ!!』


マジでどこから声がしてんだ?周りには何も無いが…。


『ここよ、ここ』


声のする方。なんかめっちゃ小っちゃい女の子が居た。もしかしてこの子が精霊?


契約するって…どういう事だろう。もし契約してつき纏われたら迷惑なんだが…。


『迷惑っ!?この私が!?』


なんでそんな自尊心が高いんだよ…。


『むきーっ!!!将来的には精霊界の女王になるの!!』


願望かよ。じゃあ俺だってエルドラドみたいに種族の王になるもんね~


『え...あなたエルドラドの知り合い?』


「てかさっきから俺の心呼んでんじゃねぇよ!」


『精霊に許された能力よ。我慢しなさい』


「俺はエルドラドの民だよ。あいつが孤独じゃん?可哀そうだろ?」


『そう…彼は孤独になったのね』


「俺は!?」


『あなた名前は?エルドラドと知り合いなんて普通じゃないわ…それに』


それに…?まあいい。


取り敢えずこの試練をクリアしたい。


『クリアしたいなら私の望みを叶える事ね』


「女王になりたいってか?何をすればいい」


『そうね…まずは王の象徴である”王冠”かしら!」


ふむ…王冠ね。


「ほい。これ”火山の結晶”いっぱいあるから何個でも持ってけ!特別サービスだ!」


『………ふざけないでっ!そんなそこら辺に落ちてる石なんていらないっ!』


そこら辺に落ちてる石!?この神の如きアイテムを、石だって!?なんて不遜な女なんだ。


そんなお前には紅輝石だ。


「ほれこれなら綺麗だろ?」


『ただの石じゃない』


ただの石!?紅輝石をただの石って言ったのか!?こんな綺麗な宝石に向かったただの石!?


お前は只の精霊だろって言いてぇわ。


『聞こえてるから!全部聞こえてる!』


なんかちょっと涙目になってきた。生意気な割にメンタルは弱いらしい。そんなんで王になれるのかな~?


『むきーっ!!!もう許さない!あんたが私にぴったりの王冠を持ってくるまで呪をかけてやる!』


でででででででででーででん。冒険の所が消えました。


「え?マジで呪掛けたの?冗談やん…」


『なら早く私に相応しい代物を用意する事ね。制限時間は三日、それまでに用意できなかったらあなたの運のステータス…10分の1になるから』


ぎょえ~!!!なんて呪つけてくれてんだ!


「分かった分かった、王冠だろ?」


うぅむ…そう言えば…女王蟻からドロップした奴に王冠みたいな奴があったような無かったような。


お...これだこれ。《焦熱の王冠クラウン・オブ・イグニス》。たしか女王蟻のレアドロだった奴。この精霊には少し大きいが…象徴ならば実際に着ける必要は無いしな。


「これなんかどうだ?」


『どれどれ…ふぅん…少しはやるみたいね』


お気に召したみたいだ。レアドロなので少し名残惜しいが…まあ良いだろう。


「王冠の次はなんだ?」


『勿論臣民の獲得よ!王たるもの統治しなきゃ!』


………分不相応な気もするが…まあ良いか。


「俺はエルドラドの民だからなぁ...俺は無理だが…」


『ちっ…』


今舌打ちしただろ。聞こえてんぞ。


うぅんどうしようか。あ、いい事思いついたぞ。


知能があって、一杯いる奴。


「ちょっと待ってな」



「ほい...お前の初めての民」


『ぎぃえぇ!!!』


差し出したのも。あの異常発生したレアモンスターのカマキリである。

こいつら俺が格上って事を理解して攻撃してこないし、丁度良かったわ。


「な、こいつの民になってあげてくれ」


カマキリに一言。カマキリは俺に逆らう事が無いため、力なく頷くことしか出来ない。

頷いているのか、死を見たか。まあ誤差誤差。


『ま、まあ私のいう事を聞くのなら…』


「キシャァ!!!」


『ぴえぇぇ!!』


俺には逆らわないが、弱い奴には逆らうよな。自然だと言える。


「こらこら。こいつはお前の王になる奴だ。不敬であるぞ」


カマキリが大人しくなる。案外物わかりの良い奴だ。良い国民になるなこいつは。


『そ、そうであるぞ!』


虎の威を借るなんとやら。全く...こいつが王なんて世も末だ。


「次だ次。次は何を求める」


『つ、次は王国の再建よ!』


「再建もなにも王国なんて無いじゃねぇか」


建国だろ。


『違うのっ!この先にもともと住んでた所があるの!』


サイですか…。


「じゃあ行ってらっしゃい」


『待ちなさいよ!…なんかめっちゃ強い龍が居座っちゃった』


えぇ…不憫と言うか…何と言うか。


「その龍を俺に討伐して欲しいと?」


『う、うん…』


「もしかして…お前そのためだけにあの石碑を立てたな?」


『そそそそそんなことない!?』


………帰るか。


『待って待って!!本当に!報酬はあげるから!とびっきり豪華な!』


ふぅむ。ならば討伐してやらんことも無い。だが…今は能力が制限されてるし、あいつとの死闘で満身創痍だからなぁ。


『頑張って!私の国の英雄になるのよ!』


誰がお前の国の英雄だ。


「しゃあねぇ…案内してくれ」


その龍を見てみない事には始まらないな。


『わ、分かった。ついて来て』


そう言って石碑に近づくチビ。

なにやら呪文を唱えているが…。


ズドドドッ…………!!

何もない空間。そこに洞窟の入り口が現れた。


へぇ…凄い力だ。今の一瞬で流れた魔力…秘匿の術式と幻影の術式。それに…構造変換の術式も兼ねていた。こいつ実は結構やるな?

そしてその洞窟の奥。ただただ佇むそれが居た。


『え?なんで?』


「骨…だな」


龍の形をした骨が奥で佇んでいた。


「もしかして…閉じ込めてる間に死んだんじゃねぇの?」


『嘘っ!?龍って寿命が半無限だよ!?』


知らんけど…でも骨やしなぁ。いやぁ楽でよかった。


「良かったじゃねぇか。お前を邪魔する者はいなくなったぞ」


ってこの骨…!結晶化してるぞ!!!てか龍のあらゆるところが結晶化している。これは…凄いレアな事なんじゃないか!?


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灼涙晶しゃくるいしょう》・・・龍が死に際に流した“最後の感情”が結晶化した宝石。


焔晶竜核えんしょうりゅうかく》・・・”龍の心臓”が結晶化したコア。


《紅蓮の爪鋼ぐれんのそうこう》・・・龍の爪が圧縮され、金属と化した異質な素材。


《赫焔の尾珠かくえんのびじゅ》・・・龍の尾の根元に宿っていた小核が結晶化したもの。


《終焉の角核デスフォル=コルヌス》・・・龍の角が“死を受け入れた瞬間”に中心から晶核化したもの。


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うわぁぁ!!ちゃんと龍種だ!紛い物の竜なんかじゃない。本当の気高き龍種の結晶だ。


ここで一体どんな最後を迎えたのかは知らないが…”火山”で死んだから火の魔力を帯びているのか…はたまたもともと火属性の龍だったのか。


どちらにしても…お前の素材は俺が貰っておいてやる…ぐへへ。


『わ、私の悩みの種が…』


「良かったじゃねぇか。これでお前も立派な王だ」


『ってちがーう!国に必要なモノに神話は必要なのっ!』


んなこと言われたって…。龍の遺骸から国が建国されたとかでも十分神話だろうに。


『ここから私の王国を発展させていく!』


「おう、頑張ってな」


よぉし…お宝も手に入った事だし、とっとと帰るかぁ!

流石に今の状態で”火山”グランドトータスとやり合いたくは無いな。

次に”火山”に来るときがあれば”火山”グランドトータスとやってみたいぜ。


『ちょっとちょっと!?ナニ帰ろうとしてんの!?』


うん?あぁ...まだ居たんだ。

後なにすんだよ...。


『勿論…国に必要なモノ…財宝よ!』


帰るか…。まあ龍の結晶化した素材が手に入った分有意義だったな。隠しフロアでは無かったが…まあ上々の報酬は手に入った。


『き、聞いてよっ!』


「財宝なんて俺持ってないぞ。てか、部外者に施しを受けるのが王のすることか?」


『うっ…それを言われると何も言い返せない…』


なんか少しだけ可哀そうになって来たな…。いや、ここで絆されるのが正しい訳では無い。心苦しいが帰る事にしよう。


『分かった!私と契約してくれたらそれでいい!』


「なんの契約だ?」


重要なのはそこだ。こちらが一方的に搾取される契約ならば結ぶ訳がない。


『そこは安心して。私の力を与える代わりに、偶に足を運んでレアアイテムを奉納してくれたら良いわ!』


よし!帰ろうか。


『たーんま!!私の力を見てから言ってよねっ!』


まあそれはそうか。こいつがもしかしたらすげぇ力を持っている可能性もある。


「よし、見せてくれ」


『あなたのステータスに能力の一部を載せたわ!』


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精霊の恩寵【火】・・・火の精霊から寵愛を受けた者だけが与えられるスキル。火の精霊か愛されている為、火の魔力を無際限に生成する事が出来る。


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「よし、契約しよう」


『早っ!?え?良いの?そんな強いスキルじゃないと思うけど…』


「分かって無いな。スキルは組み合わせだ」


俺の有する【光輝】の魔力と組み合わせた時、どうなるか。それに…火の魔力が無制限なのは破格だ。一生火に困ることが無いって事だろ?


「まあ、レアドロを貢ぐかどうかは置いといて…レアアイテムは安心しろ」


俺は隠しフロアマニアだからな。必要ないレアアイテムならコイツに分けたって良い。


「名前は?チビじゃ不満だろ」


『あ、当たり前!私はイグナリア。精霊王になる精霊よ!』


まあそこは何でも良いが。イグナリアか、良い名前だ。


『でしょっ!?いい名前だよね…ありがと』


ちょろっ!なんかクネクネしてるし…。やっぱ精霊って人と関わらないから初なんやろなぁ。


『だれがちょろいよ!ふんっ!』


いやぁ…”火山の結晶”だけでも十分だったが…こんな収穫があるなんて…。


『あ、それと…これ言ってたお礼』


「あ?あぁ...そう言えば言ってたっけ」


龍の結晶で舞い上がって忘れていた。

これは…指輪?なんだコイツ…俺の事が好きなのか?


『ば、馬鹿なこと言わないでっ!』


「なぁに真っ赤になってんだ」


ちと娶るには小さすぎるな。俺の小指くらいのサイズじゃな。


『だから違うって!』


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精霊の指輪・・・精霊族のみが作る事の出来るアクセサリー。運のステータスが大幅に上昇する。


装備時、ステータス補正【運のステータス2倍】


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う、うおぉぉぉぉ!!!!に、二倍!?とんだぶっ壊れ装備じゃねぇか!?


「愛してるぜ!イグナリア!!ちゅっちゅ!」


運のステータスを上げる方法は称号によるステータス補正ぐらいだった。それが装備で上げる事が出来るってなるとこれはもう”始まった”な。


『きゃっ!な、なに!?そんなに嬉しいの!?ふ、ふふん』


「偶にレアドロも視野に入れるくらいにはデカい」


運によってレアドロの確立も勿論上がる。それを鑑みれば神の如きアイテムだ。


倍って…普通に壊れすぎだろ。


『じゃ、じゃあ頑張ってレアアイテム集めてね』


任せてくれ。俺はレアアイテムと隠しフロアには目が無いんだ。お前の期待に応えて見せる。


「じゃあな。偶には顔見せてくれよ」


『私と契約してるなら何時でも会えるわよ』


ふぅん…。別に嬉しくなんか無いんだからね!


そんな出来事がありつつ、”火山”の探索を終えたのだった。

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隠しフロアを攻略してレアアイテムとレアスキルを手に入れた俺が最強に至るまで 鮭のおにぎり、しゃにぎり @netorarebokumetu

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