第7話 隠しフロアⅤ
どれくらい時間が経ったのだろう。あれ以降も考えていたが全く解決の兆しは見えない。
「食料は…あと数日ってところか」
持ってきた携帯食料も多い訳では無い。一応トレントからとったリンゴが無数にあるが…なんか食べると不穏だからな…。食料としてカウントするのは辞めておいた。本当に必要になったら食べるけどな。
「あの一本道意外に道も無い。この部屋かあの一本道だけ」
この部屋も探索しつくした。因みに知力を示せという試練は只のなぞなぞだった。然程難しくもないなぞなぞが出てきて呆気にとられたわ。あれで知力が示せんのか?って思ったが、試練全体を通して児戯みたいな要素が多い。
孤独な王…ここの主に一体何があったのか。封印ってどっかに書いてたしな。多分裏切りか、それに近い何かがあったんだろう。新たな王の後継をこの試練で定めている訳でも無さそうなんだよなぁ…。そもそも人にそれが務まるとも思えない。
「参ったぜ…帰る事もできねぇし」
俺が死ぬまでこの試練について考えなきゃいけねぇのか?
玉座に座ったり、玉座を掃除したり…結構な事を試したが…特に変化はなかった。
受け入れろか…やはり心的変化が重要だろうか…。
妄想してみるか…この封印された王の存在を。
。
龍種の王、龍王。その名を黄金龍王エルドラド。
エルドラドは王として世界を統べていた。しかし、そのあり余る力を世界は恐れた。エルドラドは自身の統べていた民に裏切られ、孤独と成った。
そしてダンジョンの奥底に引きこもった。
なんてどうだろうか?いかにもなストーリーじゃないか?
エルドラドは名前に黄金が冠している通り光り輝いている龍種なのだろう。龍種はダンジョンにも滅多に表れない最高位種族の一角だ。その種族の王だとすればそれはとてつもない力を持っていたのだろう。
だからこそその力を恐れられ、孤独な王へと至った。いや…孤独な王に自らなった可能性だってある。王は民を、国を護る存在だ。自身が孤独になろうとその目的さえ遂行出来れば良い。それが王と言うモノだ。
もし、もしこのダンジョンがその王国の”荒廃”したものだとしたら。彼は護るべき民も居ない、孤独な王…いや王ですらないのかもしれない。
孤独な玉座を受け入れろ…それすなわち…護るべき民を…探し求めているのでは無いだろうか?
だとするならば…ここで俺が取る選択肢は一つ。この王の”民”となる事。
「王よ、護るべき民が、国が、再び現れます」
玉座に向かい叫ぶ。それはほんの少しの妄想だった。本来ならばそんな妄想馬鹿らしいと吐き捨てる所だ。だが…何故かこのダンジョンは敵意などが感じられなかった。試練にしてもそうだ。ゲームだったり、貢物だったり。どこか特殊なこのフロア。
「”彼の王再び現れん”」
人間味の無い声。どこから発せられているのか、誰が発しているのか分からない。
ただ、巨大な玉座が夥しい”光を纏い”始めた。
いまからそこに神が降臨するかのような景色に眼を奪われる。あまりに美しいその景色は恐怖などの感情が自身から一切消えていくのを感じる。
「”””見事だ。まさか人族がこの試練をクリアするとはな””””」
そしてその光り輝く景色の中から現れたのは光り輝く金色の龍。その美しい姿から発せられる荘厳の声音に俺は何も返せずにいた。
「”””そう見惚れるな。我は屍、生を持たない未練がましい老骨よ”””」
「…最後の試練の意味、教えて貰えるのか?」
「”””我を見て最初に発する言葉がそれとは、なかなか見込みのある人族よ”””」
目の前には巨大な黄金の龍。それも俺らと会話できる龍だ。こんな相手に敵う訳も無い。好戦的じゃ無くて助かった…。
「”””護るべき民に刃を向ける事など無い”””」
心の声まで聞こえてやがる…。
「”””それと最後の試練の意味、汝の抱いた妄想、強ち間違いでもなかったぞ”””」
それの意味することは…そういう事だろう。
「俺は、俺は元の場所に帰れるのだろうか?」
「”””勿論だ。我が試練を乗り越えた褒美を渡せば直ぐに崩壊するだろう”””」
褒美…。金銀財宝だろうか。別に金なんて欲しくも無いんだがな…。
「”””汝が不要なものを褒美として渡すのは王として失格だろう”””」
「王よ…ならば王の過去を教えて下さい。褒美はそれだけで十分です」
何故だろう。本当は宝剣や禁術の類の方が欲しかった。だが、自然と俺の口から出た言葉は違った見たいだ。
「””””クカカッ、面白い人族よ。過去人族が我の前に現れた時は金銀財宝、あるいは名誉を求めやって来たと言うに”””」
「や、やっぱ別のモノにしようかなぁ…」
「”””それは無理だ。我は気に入った。汝誇るが良い、王の記憶を授けよう”””」
なんかミスった気がする。あ~俺の最強の剣と最強の魔法がー!!!
なんでこんなおいぼれ龍の記憶なんて求めてしまったんだ!!!
「”””聞こえているぞ…”””」
「すいやせん」
カッ”!まあ良いか、夢であった隠しフロアが攻略できたんだ。それだけで十分ってものだろう。
「”””記憶の本流に呑まれる事無かれ、さすれば王としての器が授かるだろう”””」
そう言って目の前から姿を消してしまった。
それと同時に俺の中にこの老龍の記憶が舞い込んできたのだった。
。
「はっ!!!ここは…」
見慣れたボス部屋。黄金ダンジョンのボス部屋だ。今までの記憶は…全部夢だったのか?
「す、ステータスだ」
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小鳥遊帳 20歳 lv 251
体力:8990
魔力:10500
筋力:4200
敏捷:3300
知力:50
運 :3500
スキル一覧
古代語lv3、剣術lv9、身体強化lv5、エルドラドの瞳【封】
称号一覧
黄金龍王エルドラドの民、黄金郷の踏破者、記憶を紡ぎシ者【封】
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な、なんだ…夢では無かったみたいだ…。
それよりも新しいスキルが手に入った。…って鑑定が消えてる!?
称号もだ。新しい称号が手に入っている代わりにあのフロアで取った称号が消えている。
と、取り敢えず詳細を確認しよう。
”エルドラドの瞳”・・・彼の王エルドラドの瞳。封印されているため制限されているが、様々な恩恵がある。
ほぉ…取り敢えずなんか凄そうなスキルだな。
”黄金龍王エルドラドの民”・・・孤独な王エルドラドの新たな民。彼の王は居なくなれど民は生き続ける。上位種のモンスターとの戦闘時ステータス補正
”黄金郷の踏破者”・・・黄金郷ダンジョンを踏破した者。ステータス補正。
”記憶を紡ぎシ者”・・・彼の孤独な王の記憶を見た者。その記憶が蘇る時、汝は資格を得るだろう。
なるほど…多分だが光り輝くモンスターを倒した称号は黄金郷の踏破者で纏められているのだろう。それにしても封印されているスキルもあるんだな…。
記憶を紡ぎシ者…確かにあの後の記憶が全く思い出せない…。
「クリア報酬がこの瞳と称号か…」
武器とか欲しかったなぁ...!!
そういえばアイテムはどうなってたかな…。
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光輝な袋・・・長年生きた長老級の光輝スライムが体内で生成する袋。実際は光輝スライ ムの胃袋だが、その容量は星の如き。レア度10
光輝の欠片・・・光輝スライムが体内で生成する美しい宝石。魔力を内包することが出来る。レア度8
光輝なる果実 ・・・その輝きは神をも狂わせる。味は普通のリンゴである。レア度9
光輝なる樹皮 ・・・光輝な木からとれる樹皮。硬く、熱を通さない、加工するのに向いている素材。レア度8
光輝なる芯材・・・光輝なる神木から極わずかに採ることが出来る芯材。レア度10
光輝なる鱗 ・・・黄金龍王エルドラドの鱗。その鱗を求め、戦争が起きる程美しく、これを用いて装備を打てば、宝具になる事間違いないだろう。
光輝なる髭 ・・・黄金龍エルドラドの髭。柔らかいが決して千切れることは無い。細かく編むことも可能である。
龍王の片角 ・・・龍種の王である龍王の片角。非常に鋭利でこの世のモノ全てを切り裂く力を持つ。
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うお!めっちゃ増えてる…。あの老龍も男心が分かっていたようだ。
うへへ...この素材があれば武器も防具も凄い物が作れるだろう。この先の事を考えるとワクワクしてきた。
経験値は貰えなかったが、それ以上のモノは貰えただろう。ありがとう黄金ダンジョン。ありがとうエルドラド。いや、我が王よ。
でもこんな素材他の人に見せるのは止めよう。取り敢えず唯利さんに報告しに行こう。
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