小さな魔法使いと大きな魔法使い
夏楽屋あまな
第1話窓から見える景色
窓から見える景色はいつも違う。大きな木があったり、お花畑があったり、道路があったり。その中でも不思議なのは真っ黒な世界だ。
いつだったか、窓の外を見ると1人の女の子がいた。私は目を疑った。私と同じ目線に女の子がいたからだ。ここは2階だからそんなことはありえない。しかも、その子の辺りだけ道があるように光っていた。
黒のワンピースに黒のリボン、黒の靴。女の子は可愛いけどイメージが悪すぎる。手には黒色の石をはめた杖を持っていた。
「えーっと、あなたは誰?」
「………。」
女の子は微かに笑うだけだった。
気がついた時にはいつもの景色に戻っていた。
本当にあれは誰だったのだろう?杖を持っていて空を飛ぶことができるから、魔法使いかな。
そういえば私も魔法使いになりたくて、鏡の代わりに窓を見て魔法使いの真似をしていた気がする。その時魔法使いらしい服が黒色のワンピースしかなくて、それを着てたっけ……
もしかしてあの子は私が望んだ姿?でも全身真っ黒なんて少し趣味が悪い。
それにしても………黒?
「黒猫だ!」
そうだ、思い出した。最近の出来事で『黒』にまつわることはこれしかない。
今らか一ヶ月くらい前、私は車に轢かれそうになった野良猫を助けた。その猫は野良猫だとは思えないほど黒く艶のある毛並みをしていた。黒猫は轢かれそうになったことに驚いたのか私に驚いたのかはわらかないけど一目散に逃げてしまった。黒猫とはそれっきりだ。元気にしてるといいけど。
「ねえ、どうだった?私の格好」
「……っ‼︎」
なんと今まで明るかった窓の外が真っ黒になっていて、あの時助けた黒猫かいた。しかも喋っててびっくりした。
「…もしかしてあの時の女の子はあなた?」
「そうだよ。私を助けてくれたお礼がしたくて」
「お礼?それで何であの格好?」
「それがあなたの望みだったから……私の力だとあなたを魔法使いにしてあげることができないから、だから少しでもあなたの望みを叶えてあげたくて、自分が人の姿になってあの格好をして………」
「どうしてあなたがそこまでするの?私はただ助けただけなのに」
「どうしてって言われても……じゃあ少し長くなるけど私の話を聞いてくれる?」
──確かに少し話が長かったのでまとめると、
彼女は猫だけど魔法が使える体質で、訳あって魔法を悪い輩に使ってしまった。(その訳は関係ないので省くとして)私が彼女と会った時、その悪い輩に追いかけられていて、必死に逃げていたために接近する車に気づかず轢かれそうに……
ということらしい。
「本当なら私はあの時死んでいた。私は元々生きることに疲れてたの。けどあなたに助けてもらってもう一度頑張ってみようと思えた。だからとても感謝してるの」
「いえ、そんな……」
私はただ轢かれそうになった猫を助けただけなのに。
「あら、そろそろ行かなくちゃ。ちゃんとお礼を言えてよかった!…じゃあね、私を助けてくれた魔法使いさん」
「ま、待って、うゎっ!」
急に吹いた風に思わず目を閉じる……
風が止んで目を開けると窓の外はいつもの景色だった。
小さな魔法使いと大きな魔法使い 夏楽屋あまな @a3160
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