第9話 初めまして、神波高校

 トイさんに助けられて数日後の今日から神波高校に転入することになった。


 前日、グレイさんから住む場所を提供されていて、なんとトイさんの住んでいた部屋の丁度一階上。トイさんは二階に部屋があり、私はちょうど三階の部屋になった。


 そして、転入初日の早朝、郵便受けに荷物が届いていることに気づいた。確認してみると、神波高校の制服が一式梱包されていた。すぐ隣には通学鞄や、学校に関する書類なども含まれていた。


 私は朝食を食べて、制服に着替えてみる。学校は違うと言えど、久しぶりの制服と言うことで、どこか懐かしさを感じた。



「くれは先輩!おはようございます!──すごく似合ってます!」



 玄関のドアを開けるのと同時にインターホンが鳴り、そこには制服を着たトイさんが立っていた。



「おはよう。ありがとう。」



 私は、トイさんから学校についての話を聞きながら、通りの道に咲いている花を眺めたり、小鳥たちのさえずりを聞きながら、グレイさんの家の近くを越えていく。

 久しぶりに心穏やかに外を歩くことができ、何となく感慨深かった。


 そして、時計の長針が半周する程の時間で、神波高校へと到着した。トイさんいわく、神波市最大の高校だそうで、アニメ等のお金持ちの豪邸などでよく見られる玄関口までの道が長いと言う特徴がある。

 その道中、歴史を感じさせつつ、今もなお堂々とした立派な噴水が構えられている。


 簡単に見渡す限りでも、グラウンド、体育館、そして校舎が何館も並んでおり、広さだけで言えば、普通の大学と大差がないと見受けられる程の広大さを堂々と誇っているように見える。その上、それぞれの館は色が異なり、シンプルながらユーモアな柄が施されており、遊び心が感じられて少しわくわくしてくるデザインになっている。


 私はトイさんと別れ、その玄関口へと進んで左側にある職員玄関口から入ると、女性の教師が男性の教師と話しているところに遭遇した。私が数歩進むと、女性教師が私の方に気付き、歩み寄ってくる。



「おはよう。あなたが夕星さん?」



「はい。今日からこの学校で学ぶことになりました。」



 整ったスーツを身に纏い、清潔感のある清楚教師という雰囲気を醸し出している。紺色のセリオンを着けており、全体的に綺麗にまとまっている……。



「あ、私、夕星さんの担任のいち瀬涼のせすずと言います。よろしくね。」



「こちらこそ、よろしくお願いします。」



 一ノ瀬先生は私にこの場で少し待機するように指示し、職員室に入り、色々と書類を抱えて戻ってきた。



「夕星さんのクラスは2年4組です。一度、教室に行って自己紹介をしてもらった後、学校内を案内しますね。えーと、それじゃあ教室に向かいましょうか。」



 一ノ瀬先生はそう言って私を手招きする。この建物は第2棟のようで、階段を登りつつ、別の棟──第4棟の3階あたりに移動した。階段を登って少し歩くと、「2-4」と書かれた札が見えてくる。


 教室の前に着き、一ノ瀬先生は再び私に待機するように指示する。一ノ瀬先生が教室に入ると、中の生徒達の声が大きくなり、少しすると静かになった。


 私は制服の生地にそっと触れながら、鞄の中の書類を確認していると、先生がドアから顔を出し、私の名前を呼びながら手招きする。


 私が教室に入ると、生徒達のざわめきが戻ってくる。黒板には白のチョークで「夕星くれは」とかなり大きく書かれていた。床にチョークの欠片が残っており、どうやら書いている時に力を入れすぎたのか、折れてしまっているようだ。



「廻羽市から来ました……夕星くれはと言います。これからよろしくお願いします。」



 教室内に盛大な拍手の音が響き渡る中、先生は私の席を指し示し、私はその席へと向かった。

 ここから、私の新しい学校生活が始まることとなった。

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