第8話 グレイさんの提案
カーテンの隙間から差し込む光が私のまぶたを照らす。ゆっくり目を開けると、確か隣で眠っていたはずのトイさんは居なくなっていた。
私はベッドから降りて立ち上がり、部屋から出てトイさんのいるリビングへと向かう。トイさんはどうやら朝食を作っているようで、レタスとスライスしたトマトとゆで卵を一緒に盛り付けていた。トイさんは私に気付き、料理を乗せたトレイをテーブルへと運ぶ。
「くれは先輩、おはようございます。ご飯できたので、食べましょう!!」
そうして、私はトイさんが用意してくれた洋服に着替え、グレイさんへの元へと向かう。サイズはぴったり。本日は快晴のようで、あたり一面が陽の光に照らされ、ポカポカと暖かくなっている。
「グレイさーん、トイでーす。例の人連れて来ましたよー!」
グレイさんの家はトイさんの家から数百メートル離れた場所に位置しており、用水路の前の住宅街の中にあった。
トイさんは、グレイさんの家のインターホンを押すと、扉が開き、中から以前見たガタイの良い、RPGの村に必ず一人はいるであろう「力持ち男」感溢れる風格を醸し出している男性が出てきた。
「おぉートイ、ありがとう。じゃ、まあ少し上がってけー!!」
「お邪魔しまーす!!」
グレイさんは、私達を中へと案内し、部屋の中央に置かれた椅子へ座るように手を運ぶ。そして、三人分の紅茶を並べて、グレイさん自身も椅子に座る。
「いやあ、この前は助かったよ。ありがとな。それで急な提案ではあるんだが──。」
グレイさんは途中で姿勢を正し、ゆっくりと言葉を続ける。
「是非とも、神波市でシュレクを討伐するチーム、通称『シュレオン』に入ってくれないだろうか。」
グレイさん曰く、この神波市は自然の太陽の光を遮る遮断パネルで覆われており、通常、シュレクはこのドームを襲撃することはないが、数が増えてくると自分のテリトリー範囲が狭くなるためか、ドームを破壊して街を襲うようになるらしい。
「そのシュレクの数を減らすために、いくつかシュレク討伐のチームが編成されているわけだ。」
「前のシュレク討伐と言うのも──。」
「あぁ、俺も、トイもシュレク討伐のメンバーの一員ってわけだな。」
と言うことは、グレイさんとトイさんと一緒に居た人達もそのメンバーと言うことだろう。
「勿論、ただでなんてことはないよ。シュレクを討伐するチームに入っている人達は、活動量に応じて、生活費とか、衣食住にかかる金銭に支援がされるんだ。」
命懸けで街の為に働くので、対価として生活への支援金が支給されるようだ。
「あーそう、それでだ。トイから聞いたんだが、高校の話だ。基本的には神波高校に行くことになると思うんだが、もう高校には連絡しておいて、もし夕星さんさへ良ければ、明日から行けると思うぜ。こんな感じなんだが、どうだろうか。」
──そう言う感じか……。
「分かりました。それでお願いします。」
「──!!ほんとか、それは助かる!明日から高校に行けるはずだ。あと、他の細かい話は追々説明していく。これ以上は長くなってしまうから、俺からは終わりだな。」
先程から少し気になっていることがあったので、せっかくなので聞いてみよう。
「あの、シュレク討伐のチーム名、『シュレオン』の由来とかってありますか……?」
「あぁ、だいぶ昔の人が決めたんだが……単純にシュレクとセリオンを合わせただけだな。」
思った通り、非常に簡単な由来だった……。
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