十中八九、死罪にて候

この作品は、面白くて、一挙に読みきってしまいました。

多分、主人公であろう男子高校生の一言、「十中八九、死罪にて候」の一言は、「仇討ち」制度が認められていない、現代日本では、この小説上はそれで充分に良いのです。

ですが、文学的に如何に優れていても、その心理描写の上手さを割り引いてみても、法学的に解釈しますと、まず男子高校生が「仇討ち」のために殺人事件を起こしても、「少年法」の適用が優先され、そう簡単には「死刑」にはならないのです……。
これが、大人の場合でも人１人の殺人事件では、まず「死刑」にはなりません。
過去の判例上、２人のみ殺して死刑判決を受けたのは「光市母子殺人事件」ぐらいです。…続きを読む

本作は少年の犯罪行為の背景を描いたものです。
この短い物語の中に、たくさんの社会問題が組み込まれているため、読む人がどこに着目するかによって作品のテイストが変わる可能性を示唆しています。

断罪ものとして読むも良し、英雄の悲劇と読むも良し、人間の愚かさに泣いても良し。

ただ私は、少年少女の遺族だったらどうかと思いました。
事件は一瞬で終わりますが、残された人は死ぬまでです。

非常に重いテーマですが、私たちが本当の社会について考える機会となるに相応しい強さの作品です。