第19話 ヒエラルキー崩壊
最終戦。ついに理事長本人がリングに立った。
白いスーツに身を包み、悠然とした佇まい。だが、その目には底知れぬ圧力があった。
「お前たちの努力は称賛に値する。しかし、秩序を乱す芽は摘む」
理事長の声が場内に響き渡り、観客席は緊張に包まれた。
開始の合図と同時に、理事長の能力が発動した。
全校ネットワークに接続された彼専用のシステムが、スプロウツの動きを完全解析する。
「動きが読まれてる!?」哲が叫ぶ。
祥子は即座に判断を下す。「フィオナ、今よ!」
フィオナは即座に端末を操作。学園ネットワークに割り込み、ウリエルが開発した妨害プログラムを起動させた。
「ネットワークをジャックするわ!」
画面に無数のコードが走り、システムの制御が奪われていく。
理事長が表情を歪めた。「何をした!」
フィオナは笑みを浮かべた。「不正データ、全部公開よ。あんたが下層を利用してきた証拠も」
場内のスクリーンが切り替わり、階層固定化計画や裏取引の記録が次々と表示された。
観客席はどよめき、怒りの声が湧き上がる。
「こんなこと、許されるはずがない!」
理事長は動揺し、能力の制御が乱れる。その隙を拓馬は見逃さなかった。
「今だ!」
再演(リフレイン)が発動し、理事長の攻撃パターンを一瞬で逆写。仲間と連携し、決定打を放つ。
理事長は膝をつき、リングに沈んだ。
審判の声が響く。「勝者、スプロウツ!」
観客席から大歓声が起こり、怒号が歓喜に変わった。
祥子が息を吐き、笑った。「終わったわね」
拓馬は汗だくのまま拳を握る。「いや、これからだ。ヒエラルキーはもう壊れた。次は新しい形を作る」
その瞬間、学園全体に支配構造崩壊の知らせが広がっていった。
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