第18話 揺れる蒼光 

 第三試合を制した直後、拓馬は異変に気づいた。

  手のひらに走る微細な痛み――再演(リフレイン)の蒼光が、これまでにないほど強く脈打っていた。

  ウリエルが端末を確認し、表情を曇らせた。

 「まずい、蒼光の出力が制御限界を超えかけている」

 「暴走ってこと?」友梨が顔色を変える。

  ウリエルは静かにうなずく。「おそらく理事長が裏で干渉している」

  理事長は観客席最前列で不気味に笑んでいた。

 「やはり……お前の力は不完全だ。自壊するがいい」

  次の相手がリングに現れた。異能干渉系の能力者で、能力を無効化するという厄介な相手だった。

  開始直後、拓馬は動きを封じられ、蒼光の制御が乱れる。視界が歪み、過去と現在が交錯するような感覚に襲われた。

 「ぐっ……!」

  その時、友梨が大声を上げた。

 「拓馬! あんたの力は失敗をやり直すための力でしょ! 過去に負けた自分を取り戻すためのものじゃない!」

  その声が、混乱しかけた意識をつなぎ止めた。

  拓馬は歯を食いしばり、蒼光を再び掌に集める。

 「俺は……仲間のために戦う!」

  暴走しかけた蒼光が安定を取り戻し、再演が発動。敵の干渉タイミングを逆手に取り、仲間のサポートと合わせて一気に攻勢へ転じた。

  審判が勝利を告げた瞬間、拓馬は膝をついた。

 「……危なかった」

  祥子が駆け寄り、彼の肩を支える。「でも、乗り越えたじゃない。失敗も、力の揺らぎも」

  哲は涙ぐみながら笑った。「お前、本当にすげえよ」

  観客席で理事長の笑みがわずかに消える。

 「まだ崩れぬか……だが次が最後だ」

  拓馬は立ち上がり、深呼吸した。蒼光はまだ揺れているが、その奥には確かな決意が宿っていた。

 「理事長、絶対に終わらせる」

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