第11話 合同演習の罠 

 翌週の水曜、学園外縁にある広大な演習フィールド。合同演習の名目で下層生徒が一斉に集められていた。

  広場の中心には仮設の指揮テントがあり、周囲をぐるりと監視ドローンが飛び交っている。

  スプロウツの面々も参加者の一員として配置についた。

 「いやな予感しかしない……」哲が小さくつぶやく。

  友梨は端末を握りしめ、周囲の動きを監視する。「変な動きがあったらすぐ知らせる」

  祥子は仲間を見回し、声を落とした。「気を引き締めて。計画は今日、実行されるはずよ」

  拓馬は再演(リフレイン)の蒼光を掌に感じ取りながら、無言でうなずいた。

  開始の号令とともに、上空から複数の輸送機が現れた。そこから現れたのは、完全武装のエリート部隊。学園警備の名目で動員されているが、その行動は明らかに“排除”目的だった。

 「全員動くな! これより特別措置を執行する!」

  機械的な声が響き、周囲の下層生徒たちが一斉に混乱する。

  その時、哲の感性が鋭く反応した。

 「左側の林の奥……迂回ルートがある!」

  寛人がすぐさま動き、「お前ら、ついてこい!」と声を張り上げた。

  追撃部隊が迫る中、拓馬は再演を発動し、敵指揮官の動きを巻き戻す。敵がどのルートで包囲しようとしているのかを瞬時に把握し、指示を飛ばした。

 「右から二番目の小隊が空く! そこを突き抜けろ!」

  栞奈が端末を叩き、ルートマップを全員に転送する。

  混乱しながらも下層生徒たちは一斉に動き、スプロウツを先頭に包囲を突破した。

  激しい追撃の中、祥子が冷静に指揮を執る。

 「焦らないで! 経験を信じて!」

  友梨が後方からサポートし、哲が泣きそうになりながらも仲間を守るため叫んだ。

 「みんな、走れ!」

  やがて森を抜けた一行は、安全圏へと辿り着いた。

 「……助かった……」誰かが息をつく。

  拓馬は振り返り、遠くで追撃を止めるエリート部隊を見据えた。

 「これが……理事長のやり方か」

  彼の拳は震えていたが、その瞳には恐怖ではなく怒りが宿っていた。

 「次は、俺たちが仕掛ける番だ」

  合同演習の罠は失敗に終わり、スプロウツの名はさらに学園中に広まっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る