第10話 裏取引の夜
金曜の深夜、学園理事長室。煌々と輝く高層ビル群を窓越しに眺めながら、理事長は無表情でグラスを回していた。
その向かいに座るのは、ヴァルハイト社の重役。公開ランクバトルの翌日から続く密談は、いよいよ本題に入っていた。
「理事長、スプロウツの台頭は予想外でした。下層が目立ちすぎると、我々の管理モデルに支障が出ます」
理事長は口元だけで笑い、低くつぶやいた。
「分かっている。だからこそ“下層一斉除籍計画”を進める」
その言葉に、重役が満足げにうなずく。
「我々は支援を惜しまない。だが条件がある。スプロウツを最初に排除していただきたい」
一方その頃、学園の片隅にある小さなカフェでは、フィオナがノートパソコンを開き、イヤホンを装着していた。彼女の端末には、理事長室の映像が映し出されている。
「やっぱり……裏取引ね」
フィオナの目は鋭かった。留学生でありながら、学園内の情報網に独自のアクセスルートを持つ彼女は、密談を盗聴することに成功していたのだ。
廃部室に集まったスプロウツの面々に、フィオナは映像を再生した。
祥子は眉をひそめる。「下層一斉除籍……? 本気でそんなことを?」
哲は顔を青ざめさせた。「冗談だろ、俺たち全員、学園から追い出されるってことじゃ……」
寛人は机を拳で叩き、「ふざけんな、そんなこと許せるか!」と声を荒げた。
栞奈は冷静に映像を見つめ、「計画の実行タイミングは?」と問う。
「来週の合同演習の日。下層生を一箇所に集め、一気に排除するつもりよ」フィオナが答えた。
拓馬はしばらく沈黙した後、拳を握った。
「……俺たちで止めるしかない。絶対に、この学園の仕組みを壊してやる」
祥子が微笑み、仲間を見回した。「そのために、私たちはチームになったんだものね」
外の街灯が雨粒に反射し、夜空を青白く照らした。
スプロウツは知らず知らずのうちに、学園全体を揺るがす戦いの中心へと踏み込んでいた。
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