第29話

「ごちそうさまでした。」


ぱちんっと軽く手を合わせてゴミを捨てに立つ。

2人はその間もずっと下らない話で盛り上がっていた。



「で、調子はどう?」


出してくれたお茶を口にしながら鉄喜を見れば、俺の方に視線をやって苦い表情を浮かべた。


その表情で粗方予想はつく。



「やっぱり難しそう?」


「まあなー、そう簡単じゃないよな」



そっか。と返事をして、どうするべきかと悩む。



「相変わらず教室へは来てないみたいだね」


「ヤケんなってんだよ。

寮部屋かそこら辺ぶらつくかしてるんだけど、まっじで全然捕まんねぇの」


「はっはっは。まるで一年前の誰かさんみたいだね」


「嫌味かよ」


ぽこっと頭を叩かれる。

本当のこと言っただけなのにさー。



「で、俺の真似っこして付き纏ってるわけだ?」


にやっと笑えば、気まずそうに視線を逸らされた。


「鉄喜たちの追いかけっこ面白ぇよー!

まぁじで嫌がってんのウケる」


「あいつが逃げるからだろ」


「こんな何考えてるかわっかんない仏頂面のヤロウが追いかけたら誰だって逃げるってぇ」



ケラケラ笑う由良が鉄喜にぶん殴られる。


いやー、しかし一年前俺と追いかけっこしてた鉄喜が次は追いかける側になってるなんて、人生何があるかわかんないよね。



「資料的にも実際会って話してみた感じでも、悪い奴じゃないと思うんだけどね」


中々"Fクラス"を受け入れるのは難しいよね。



「そんなに嫌かなー。Fクラス」


慣れれば楽だと思うんだけど。



「お前が絶滅危惧種並みに珍しいってこと忘れんなよな」


「ふつーのヤロウは嫌だよねぇ。Fなんてさ」



そう言い放つ2人の方が多分正常。


だけど、知るよりも先に偏見が入っちゃうのはどうにかなんないかなぁ。


勿体無いって、素直にそう思う。




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