第30話

「今回の件もそうだけど、Fの実態を知らない奴と関わるのって難しいよね」



偏見から入っちゃってる人に、俺たちはそんな奴らじゃないんです!って言ったって何にも伝わらない。


それがむず痒くて歯痒い。



「だから知ってもらうために付き纏ってんだろーが」


「はは、まあそうだね」



Fクラスは大半がヤクザだったり、暴力団系の家系出身で、それが理由で一般クラスからは距離を置かれている。


そして、それとは別にもう一つ。


Fクラス生が一般クラス生に蔑まれる理由がある。


それが通称"Fクラス落ち"と呼ばれる制度で、一般クラス在籍者でも喧嘩沙汰を繰り返したり、注意を受けても普段の素行が直らなかった場合、稀に一般クラスからFクラスにクラス落ちすることがある。


一般クラス生からすれば、Fクラス生はそういう掃き溜めのクラスという認識も少なからずあり、落ちることは恥の何物でもない。


その為、何らかの理由でFクラス落ちしてきた生徒は、その大半が荒れたり不登校になったりする。


もちろん中には諦めて仲良くしてみたら案外普通で、楽しくFクラス生と過ごせてる。なんて奴もいるが、まっじでごく稀。



プライドの高い生徒が多いこの学園で、Fクラスに落ちて平気な人は早々いない。



「鉄喜が任せてくれって言いに来たときはびっくりしたけどね」


「やめろよ恥ずいだろ」



Fクラスに早く慣れてもらうために、Fクラスに落ちてきた人へは俺が毎回挨拶に行ったり、慣れるまでの話し相手になったりする。


せっかく同じクラスになれたのにFクラスになったからっていう理由で退学してしまうなんて、悲しいじゃん?


だからこれは俺の日課なわけだけど。



「でもこれは鉄喜に任せてよかったなって今は思ってるよ」



今回は自分と重なる部分があったのか、俺に代わって鉄喜がその役を引き受けてくれている。


鉄喜と腹を割って話せばきっと仲良くなれると思うんだけど、まあまだ直ぐには難しいよね。



「何も進展ねぇけどな」


「それでいいんだよ。

初めはみんなそんなもんだし」


鉄喜だってそうだったでしょ?と笑えば、まあな。と返された。


恥ずかしがっちゃってー。思春期か?



「鉄喜と同じような理由で落ちてきたから…きっと、仲良くなれるよ」


「…仲良くなるよりも先にあいつがやめねぇかわかんねぇけどな」


「それは大丈夫じゃない?

だって一年前の鉄喜は学校を辞めるなんて考えもしなかったでしょ?」


言えば、少し面食らった表情をしてから苦笑いを浮かべた。


「それと同じだよ。」


2人は似てるからね。とっても。





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