第28話

日曜日の午後。

友人の寮部屋のチャイムを鳴らす。


数秒経ってバタバタと足音がして、ガチャっと扉が開いた。



「とーま! やっほ!」


「由良いたの?」


顔を出したのは想像してなかった奴で思わず首を傾げれば、途端にむくれた顔になった。



「第一声がそれってひどくね?

ここ一応俺の部屋でもあるんだけどー」


「ごめんごめん。いると思わなくて」


この時間普段ならどっかに行ってることが多いし。


「今日快斗捕まらなくってさ。

鉄喜(てつき)が斗真くるって言うから待ってた」


入りなよと言われ、素直にお邪魔する。


中は相変わらずめちゃくちゃ綺麗でも、めちゃくちゃ汚くもなく、程よくごちゃついていて男の部屋って感じだ。


由良に続いてリビングに入れば、冷蔵庫の前でお目当ての人物がこちらを振り向いた。



「よ。早かったな」


「午前の仕事が早く終わったんだよ。

悪いけどここで飯食わせて」


「あーだからお前制服なん?」


休みの日なのにご苦労さん。と言われ、それに軽く返事をして床に腰を下ろした。


腹が減りすぎてる。


購買で買ってきた焼肉弁当を広げれば、さっとお茶を出してくれる鉄喜。



「さっすが。できる男ー」


「だろ?」


「2人はもう昼食べた?」



食べた、と口を揃えられる。


台所を見れば2人分のカップ麺の殻があって、男子高校生だなと苦笑い。



「たまには自炊しなよ?」


「まーた母ちゃんみたいなこと言い出したよこいつ」


「だぁかぁらぁ、泰雅貸してって言ってんじゃん」


「泰雅は俺の飯作るので忙しいからダメ」



俺も作れることは作れるけど、同じ部屋の泰雅の方が何百倍も美味い。


同部屋の特権なのでこればっかりは譲れません。



「夜は食堂行ってんの?」


「行ってるよー。流石にちゃんとした飯食いたいし」


「食堂と言えば今週の日替わり定食さー、」



2人の他愛無い話を聞きながらさっさとご飯を済ませる。





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