第10話

 山口は通路奥に白塗りの男がいることに気づいた。

「ひっ!」

 山口はエレベーターに飛び乗る。4階のボタン連打した。

 山口には扉が閉まるのがやけにゆっくりに感じられた。閉まってゆく扉の隙間から殺人鬼がこちらに向かって走って来るのが見えていた。やっと閉まってエレベーターが上にゆく時に、ドンとドアが大きな音を立てた。

「わあ」

 山口は一歩後ろにさがる。携帯を握りしめながら震えた。

「岩本さあん」 

 エレベーターが上がってゆく。

 やっと4階についた。

 山口はエレベーターから出て。震えながら通路を進んだ。


 1階のエレベーター前。 

 殺人鬼はエレベーターが何階に止まったのか確認していた。



5 携帯電話

 

 山口は事務室の中に入った。奥の机の下に隠れる。携帯で岩本に電話をした。

「岩本さん! いた!」

「落ち着いて」

「ど、どうしよ」

「俺がカメラで犯人見とくから、とにかく逃げて」

「うん……」

「他に人いないよね?」

「今日は私と岩本さんだけだよ」

「よかった」

 岩本はカメラを見る。

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