第5話

「しっかし、あんなん突然来たら、たまったもんじゃねえな」

 もう一口食べようと麺を箸でつかんだ時。

 見ていたカメラに人が映った。

 岩本は固まる。

(やつだ)

 白塗りの殺人鬼がカメラを見ている。

「また……見てる」

 カップラーメンを机に置いて、岩本は画面を食い入るように見た。手に取った電話を操作する。番号間を間違える。打ち直す。

「もしもし、セキュリティ岩本です!」

繋がった。

「はい、どうされました?」

現地のセキュリティの人だ。

「逃げてください! 殺人鬼が来てます!」

「は?」

「ニュース見てないんですか!?」

「なんですか?」

「だから! さ・つ・じ・ん!」

 施設警備の電話の声、遠くなる。

「どなたですか? え? うわああああああ!」

 岩本は立ち上がる。    

「逃げろ! もしもし! もしもし!」

 モニターを見た。警備員が包丁で滅多刺しにされていた。

 施設警備員の呻き声が電話から聞こえてくる。

 岩本は石のように固まって動けなくなっていた。

 モニターに映る殺人鬼が電話を手に取った。

 電話から声。

「もしもし」

「…………」

 岩本は何も言わなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る