クロス~ Cross✖️Clothes

音羽さら

第1話 星屑の出会い

星彩のドレスと剣の誓い 第1話

8月の東京は、うだるような暑さがアスファルトを焦がしていた。臨海エリアの「コンベンションセンター」は、ガラスと鉄骨の建物が陽光を反射し、汗と熱気で揺れていた。今日は「同人誌即売会」、夏コミを思わせる年に2回の祭りだ。開場前の広場は、色とりどりのウィッグや衣装で賑わい、扇子の音と笑い声が響く。汗だくのレイヤーたちがペットボトルを手に談笑し、カメラのシャッター音が夏の空気を切り裂く。

朝の更衣室は、蒸し暑さと準備の喧騒で溢れていた。涼は、大学2年の20歳、コスプレ歴は浅く、今回が2回目の挑戦だ。170cmの華奢な体型は、アニメ『星海のクロニクル』のヒロイン、ルナリアにぴったりだった。ルナリアは銀河を旅する歌姫で、ピンクのドレスと花冠がトレードマーク。2年前に放送され、SNSで「ルナリアの歌、泣ける!」と話題沸騰した人気作品だ。涼のドレスはネットで買ったピンクのサテンドレスで、レースのフリルと星型のビジューが付いている。自分でビジューを追加したが、接着剤の跡が目立ち、縫い目がガタガタだ。胸元に銀のリボンを結び、肩にチュールのショールを重ねたが、暑さで肌に張り付く。ウィッグはシルバーハイライトのピンクだが、蒸れて絡まり、ファスナーを上げるのに手間取った。「うわ、閉まらない!」と呟き、汗で滑る手で悪戦苦闘した。メイクは初心者らしく拙く、アイラインはガタつき、チークは塗りすぎて慌てて拭った。汗で崩れそうになり、鏡の前でパウダーを重ね、「よし、ルナリアになるんだ。星空の歌姫、優しく、気高く!」と高めの声で呟き、気合を入れた。首に「撮影OK」のプレートをかけ、汗をぬぐいながら広場へ向かった。

颯は、別の更衣室で準備を進めていた。大学1年の19歳、コスプレ歴4年目で、姉の協力で衣装やメイクを学んできた。180cmの堂々たる身長は、『星海のクロニクル』の剣士ヴァルトに最適だった。ヴァルトはルナリアを守る寡黙な護衛で、鋭い目元とクールな雰囲気が特徴。SNSで「ヴァルトの剣シーン、かっこよすぎ!」と人気だ。颯のコートは姉が選んだ黒いウール生地に、銀のボタンを手縫いし、肩の星の紋章は姉の指導で金糸刺繍した。剣は発泡スチロールを削り、姉に教わったスプレー塗装で仕上げたが、暑さで手に汗が滲む。ウィッグはダークグレーで、姉のカットでヴァルトの前髪を再現。メイクは眉をシャープに描き、コンタクトで目を鋭く、チークを控えめに。暑さで汗が滴る中、鏡の前で剣を握り、「よし、ヴァルトになるぞ。ルナリアを守る剣士、クールに、強く!」と低めの声で呟き、気合を入れた。首に「撮影OK」のプレートをかけ、広場へ向かった。

広場に着いた涼は、ピンクのウィッグが汗で額に張り付いていた。「ルナリアさん、めっちゃ可愛い! 撮影いいですか?」とカメラマンが声をかけた。涼はルナリアの声色で「う、うん、いいよ!」と答え、ドレスの裾を握り、蒸し暑さに耐えながら微笑んだ。ポーズはルナリアの定番――花冠を手に、首を傾げ、星空を見上げる視線。シャッター音が響き、「最高! ルナリアそのもの!」とカメラマンが叫ぶ。涼は内心、「やった、なんとかできた!」と高揚したが、ウィッグの蒸れに「倒れそう…」と呟いた。暑さでドレスの重さが堪え、ビジューが汗で光る。コスプレ歴が浅い涼にとって、注目されるのはドキドキするが、暑さでメイクが崩れる不安がよぎった。

颯は、広場の反対側で黒いロングコートを翻し、剣を手に歩いていた。180cmの堂々たる姿に、カメラマンが「ヴァルトさん、ポーズお願い!」と声をかける。颯はヴァルトの口調で頷き、剣を構えた。シャッター音が響き、「バッチリ!」と内心満足したが、暑さに汗をぬぐった。広場は陽射しに焼かれ、扇子の音と笑い声が響く。汗だくのレイヤーたちがポーズを取り、カメラマンがシャッターを切る。

突風が吹き、涼の花冠がふわりと浮いた。「あっ!」とルナリアの声で叫び、汗ばむ手を伸ばしたが、風は花冠を広場の向こうへ飛ばした。花冠は、黒いコートの人物の足元に落ちた。颯だった。颯はかがみ、花冠を拾い、「ルナリア、落とし物だ」とヴァルトの低めな声で言い、汗で光る額をぬぐいながら笑みを浮かべた。涼は息を飲んだ。目の前のヴァルトは、180cmの長身でコートが風に揺れ、剣を持つ姿が本物の剣士のよう。「ありがとう、助かった…」とルナリアの声で答え、花冠を受け取った。指先が触れ、涼の心臓が跳ねた。「このヴァルト、めっちゃカッコいい…!」と内心叫んだ。

「花冠、なくなったらルナリアの魅力が半減するぞ」と颯がヴァルトの口調で言い、剣の柄に手を添えた。涼は「なりきりすごい!」と感心し、「うん、ほんと助かった! ヴァルト、めっちゃ似合ってる」とルナリアの声で返す。颯は「ルナリアのドレス、星みたいにキラキラしてるな」と笑う。カメラマンが「ルナリアとヴァルト! ツーショットお願い!」と声をかけた。涼と颯は頷き合い、颯が涼の肩に手を置き、剣を構える。涼は花冠を手に、ドレスの裾をつまみ、暑さに耐えながら微笑んだ。夏の風にチュールが揺れ、シャッター音が響く。「『星海のクロニクル』そのもの!」とカメラマンが興奮する。

撮影後、二人は広場のベンチに腰掛け、ペットボトルで喉を潤した。汗でウィッグが張り付き、涼は汗をぬぐう。「ルナリア、名前は?」「涼だよ。あなたは?」「颯。よろしく」と颯が手を差し出し、涼が握り返した。涼は「このドレス、市販だけどめっちゃ頑張った」とルナリアの声で言い、颯は「コート、姉と作ったんだ。剣も」とヴァルトの口調で返す。『星海のクロニクル』の好きなシーン――ルナリアが星空で歌い、ヴァルトが守る姿――を語り合い、暑さも忘れるほど盛り上がった。

昼過ぎ、涼と颯は広場の木陰で休憩した。暑さで息が上がる中、涼が「ルナリアのあの歌のシーン、好きなんだ」とルナリアの声で言うと、颯は「ヴァルトの剣さばきがかっこいいよな」とヴァルトの口調で笑う。二人は『星海のクロニクル』の話を続け、汗をぬぐいながら笑顔を交わす。涼は「颯のヴァルト、めっちゃハマってる」と内心ドキドキし、颯も「涼のルナリア、キラキラしてるな」と心で呟く。

夕方、閉会アナウンスが響き、広場は静まり返る。汗にまみれたレイヤーたちは荷物をまとめ、会場を後にする。涼はドレスの裾を折りたたみ、ビジューが傷つかないよう布バッグにしまった。颯は剣をケースに収め、コートの埃を払った。暑さで息が上がる中、涼と颯は荷物を手に広場を後にした。

「なあ、涼、連絡先交換しない? 次もペアコスやれたらいいな」と颯がヴァルトの口調でスマホを取り出す。涼は「うん、いいよ! LINEで」とルナリアの声でQRコードを交換。コンベンションセンターの更衣室エリアへ向かい、涼は「このドレス、脱ぐの時間かかる。チュールが絡まる」とルナリアの声で呟き、汗をぬぐう。颯は「コートもウィッグも重い。早く楽になりたい」とヴァルトの口調で笑う。

更衣室の入り口に着いた時、二人は同時に歩き出したが、涼が男子更衣室へ、颯が女子更衣室へ向かった。「アレ?」と涼がルナリアの声で足を止め、颯を振り返る。颯も立ち止まり、「え、涼、そっち?」とヴァルトの口調で目を丸くした。涼の顔がカッと熱くなり、「え、俺、男子…って、颯、女子!?」と素の声で叫んだ。颯は「うそ、ほんと? 私、女だよ! ヴァルトやってただけ!」と柔らかく女性らしい素の声で笑い、頬が赤らむ。二人は「あっ」と叫び、荷物を抱えたまま固まった。

涼は「待って、颯、女の子!? ヴァルト、めっちゃカッコいいのに!? って、めっちゃ背高いな!」と声を震わせ、180cmの颯を見上げて目を丸くした。颯が照れくさそうに笑い、「実はね、これ、上底ブーツなの。姉に『ヴァルトは大きくなくちゃ!』って言われて」と汗をぬぐいながら告白した。涼は「え、ほんと!? めっちゃ自然だったよ!」と叫び、笑いながら「俺、ルナリアやってたなんて、めっちゃ恥ずかしい…!」と頭を抱えた。内心、「ずっとクールな男の人だと思ってた…!」と赤面した。颯も「涼、男の子なの!? ルナリア、めっちゃ可愛かったのに!」と笑い、「ずっと可愛い女の子だと思ってた…!」と心で呟いた。二人は互いに同性だと勘違いしていたことに気づき、暑さも忘れるほど笑い出した。

涼は「颯のヴァルト、ほんとカッコよかったよ。180cm、ヴァルトそのもの!」と感嘆し、颯は「涼のルナリア、めっちゃキラキラしてたよ」と柔らかい声で返す。「また今度一緒にコスプレしない?」と涼が提案し、颯が「うん、いいね! また一緒にやろう」と笑顔で頷く。涼は「颯のヴァルト、カッコよすぎたけど…素の颯、気になるな」と胸が高鳴り、颯も「涼のルナリア、可愛すぎたけど…素の涼、どんな人だろ」とドキドキした。「じゃ、私、こっち」と颯が女子更衣室を指し、照れ笑い。涼は「うん、俺、こっち」と男子更衣室へ向かい、振り返って「また近々!」「絶対!」と手を振った。コンベンションセンターのガラス壁に夕陽が反射し、汗と笑顔に彩られた二人の出会いは、『星海のクロニクル』の星屑のようにキラキラと輝いていた。

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