第12話 茨の騎士 1
固まりすぎた血は、今流れる血よりもなお強大である。
密室に閉じ込められて感じる暑さと、大釘に胸を貫かれる苦痛を比べることは許されぬ。
古き歴史は消え去り、残された痕跡は古代神話へと輪廻する。
時が進むほど、その速度が倍加していくことを知るのは、ただ我のみ。
光がすべてを放棄し、我らが濡れた闇と手を取り合ったと明かされる瞬間、それは神話へと変貌する。
神話の中に足を踏み入れる人間は、決して英雄にはなれず、光の世界には命令と死のみが存在する。
甲冑の隙間は虫どもの入口にすぎぬが、糞転がしは追放される。
悪のみで築かれた地獄の岩盤を永遠に占めるのは、我が身そのものである。
人間を跪かせるつもりはない。されど、我を恐れよ。
それがあの傲慢な女を我がもとへ導くだろう。
一週間のあいだ、この国のすべての木々と獣を刻み燃やし尽くそう。
その後に訪れるのは、我が永遠の支配か、あるいは我が死か。
残された貴公爵らは、英雄でも罪人でもないものどもを皆殺しにするであろう。
己が何を殺そうとしているかすら知らぬ女、それがお前たちだ。
中途半端に惜しむような感情を抱くくらいなら、すべての感情と感覚と臓腑を消し去るのが貴公爵の裁断である。
数分のうちにお前たちの首は落ちるだろう。
逃げる者は許そう、だが我と道を交えればその運命を受け入れよ。
この国のすべての兵が我を討たんと襲いかかろうとも、もはや以前のようにはならぬ。
孤立した虚飾の塊が我を見つけるまで、我は虐殺を繰り返そう。
生き残る者は我が威力と恐怖を世界に告げるのだ。
闇の中で唯一輝く我が異名は「茨の騎士」。
決して最強の存在ではない。されど、お前たちに下される処刑を執り行う者である。
黄昏の中、立ち昇る黒雲を飲み干しながら、彼女の名を叫ぶだろう。
もし皇帝が人の理を離れた存在であるならば、虐殺の期間は短く終わる。
そして我が選択は、この上なく悔やまれるものとなるだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます