第8話 スイスゾンビ 5
怪物たちが叫びながらプラを襲った。
プラが木から落ちる。
アンネビネは考えた。
二人でも希望は薄いのに、一人なら本当にこの森で死んでしまうだろう。
あなたが死んだら私は誰に支援を受ければいいのか。
平凡な思考だった。
正常に行動した。
アンネビネがプラの手を掴んだ。
二人の手から血が噴き出した。
血で手が滑った。
プラの手が次第に下へと滑り落ちていく。
アンネビネは全力でプラを引き上げた。
そして太い木の幹に巨大な穴を開け、そこへプラを投げ込んだ。
自分もその中へ飛び込んだ。
――今の力は風だけのものじゃないのかもしれない、強風で穴を開けたってことなのか……とプラは考えた。
アンネビネはすでに完全に疲弊していた。
……おかしいな、限界のはずなのに……と小さく呟いた。
そして気を失った。
な、何だって!?
プラは思った。
武器はあの下だ。100メートルを超える大木の根元に、巨大な防弾皮膚を持つ人食いの怪物がいる大地に。
私は今、痛みを感じていないだけで、体はホルノさんと同じくらいに壊れているはずでございます。
そして目の前には翼のある怪物たちがいるのですね……。
くそっ! ホルノさんはなぜ……普通の麻酔でもないものを私にかけて、私を混乱させてくださるのですか……。
あなたが気絶なさっている今、私は勝算があるのでございましょうか……。
十年前の暴力の時代に、どのようにして英雄になられたのでございますか……。
怪物たちが穴の中へ入ってきた。
二匹は気絶したアンネビネの腿を食い始めた。
三匹はプラに飛びかかった。
プラの頬肉が少し裂けた瞬間、彼は叫び声を上げながら怪物を掴み、真っ二つに引き裂いて殺した。
続いて二匹を同時に捕らえ、首をへし折った。
残るは二匹。
だがその姿は見えなかった。
どこにいらっしゃるのですか……くそったれな奴らめ……
プラはアンネビネの脚に触れた。
さらに腿の方へ手を動かした。
ぬめりを感じた。血のようだ。
そして、アンネビネのものではない何かに触れた。
冷たい彼女の体とは対照的に、非常に熱いものだった。
プラはアンネビネのコートの下をめくった。
二匹の怪物が、彼女の腿に取りつき、肉を喰っていた。
プラに見えぬようコートの内に隠れて。
プラは怪物たちを掴んだ。
コートの中から引きずり出した。
そして強く握り潰した。
怪物たちは血を縦に噴き出しながら潰れた。
――ホルノさんは気絶したままでございます……。
意識があったとしても、私を回復させるような力はお使いにならなかったでしょう。
そんな能力はお持ちではないでしょう。
では、この力は一体何なのでございましょうか……。
だが今は深く考える状況ではない……。
古代の記録には、部下を守るために首を刎ねられながらも駆け回った将軍の話もある。
ホルノ氏の能力も、森の呪いも、私は見てきた……。
もはや常識など意味をなさないのかもしれない。
今のところ、もう怪物はいないようだ。
少し休ませていただくべきでございましょう……。
プラは怪物の死骸を少し喰った。
壁に飛び散った、怪物の血と人の血が混じったものを舐め取った。
穴を掘るときに出た木屑も食べた。
危険でございます。
今、とても危険でございます。
何かを食べるだけでは……こんなものを食べたところで回復などできはしないのでございます。
ここに長く留まるわけにはいかない。
ここは怪物が蠢く森だ。
長く留まれば、骨が露出するほどに体が弱る呪いの森でございます。
姉には「旅に出る」と言ってまいりました。
もともと気ままに旅に出ていた私だから、疑われることはございませんでした。
しかし、もし私がここで死ぬなら――。
それは家族への恐怖であり、疑念となるのでございます。
危険でございます。
そんなものを家族に背負わせたくはないのでございます……。
ホルノ氏が回復しなければならない。
だがどうすればよろしいのでございましょうか?
体は冷たくても、心臓はまだ動いている。
両腿の半分近くを喰われたあなたの心臓が、これからも動き続けられるのでございましょうか?
夜が明け始めた。
この森で何日を過ごしたのだろうか。
私の家族にとっても、私にとっても、そしてホルノさんにとっても、勝てぬ敵など現れてはならないのでございます……。
だが今、混乱していることが一つある。
――力が湧き上がっているのだ。
さっきまで体は麻痺しておりました。
今は違います。
強大な力が満ちていくのを感じます。
本当に回復したのでございましょうか。
怪物を素手で引き裂いたことを考えれば、そうなのかもしれません。
だが、なぜ回復できたのでございましょうか?
祝福なのでございましょうか?
そんなことを考える必要はないのでございます。
とにかく、筋肉が脈打つのを感じる。
回復完了でございます!
戦闘可能でございます!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます