傷口にて

志賀拓和

傷口にて

一度だけ恐怖心からクリオネを捨ててしまったと白状します


両耳の産毛と埃が光る 皮を剥かれた地球儀にも名前を


お財布に仕掛けて朝には消えていたキウイの色のスーパーボール


誠実なだけじゃ生きていけないからザトウクジラのふりして 霙


復讐は素手でチェロに触れるようにまたは背骨に噛みつくように


もしも氷になったら海に溶けだして双子座としてまた凍りたい


藍色のジェンガを抜くたび忘れてく冷えた翼が生えていたこと


短めの走馬灯なら怖くない 生きてるクラゲをもっかい触る


日光の形がゆれる水中でこつこつと吐く、吐く、吐く息は


左手は右手を右手は左手を求めるように祈る 同時に

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

傷口にて 志賀拓和 @Eucalyptus_Kayou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画