路上占い、あれこれ⑤

崔 梨遙(再)

1話完結:1000字

 いつものミナミの夜の路上占い。目の前にデブでハゲの50代であろうオッサンが座った。


「兄ちゃん、1件なんぼや?」

「今日は他の占い師さんに見張られていないので無料(タダ)でもいいですよ」

「なんや、欲が無いんやなぁ、ほな、5千円を渡すから幾つか見てくれ」

「構いませんよ。何を占いましょうか?」

「そうやなぁ、儂がよく行くキャバクラのA子ちゃんが処女かどうか? 占ってくれや。儂、結婚するなら処女がええねん」

「・・・」


 こんなご依頼は初めてだったが、真面目に占った。“経験豊富とは言えないが、処女ではない”というのが占いの結果だった。


「なんや、ほな、もうA子ちゃんに金を使うのはやめとこう」


 “最悪なオッサンだなぁ”と思った。


「どこかに処女はおらんのかなぁ」

「今時、処女は難しいんじゃないですか。中学生とかなら処女も多いかもしれませんが。流石に中学生はねぇ・・・」

「お! あそこに女の娘(こ)達が集まってる。5、6人おるなぁ。あれ、高校生には見えへんから中学生やろ、行くで!」

「どこに行くんですか?」

「おーい! 君達、飯食いに行かへんか? 君達、処女か-?」

「「「「「えー! 何? このオッサン! ハゲてるんやけど。しかもデブやし」」」」」


 女の娘達が悲鳴を上げる。


「お客さん、ダメですよ! 中学生に手を出したら違法ですよ!」

「なんや、おもろないなぁ」

「ちょっと落ち着いてください」


「そや、儂、こういうもんやねん」


 名刺を渡された。ビル管理の社長だった。顔写真付の名刺で、明らかに写真は20代の頃のものだった。やっぱり変わった人だ。


「儂、ビルを3つ持ってるねん。家賃収入で暮らしてるんや。まあ、親から譲り受けた財産やけどな」

「へー! そうなんですか?」

「それでな、今、秘書と運転手を募集したいんやけど、どうしたらええんかわからへんねん。そないしたらええんや?」

「普通に求人広告を出したらいいと想いますけど」

「求人広告を出したことが無いからわからへんのや」


 ここで、見逃せるわけがない。僕も昼は求人広告や採用関連の仕事をしている。僕は、求人広告で提携している求人広告屋の社長に任せた。


 次の日、社長はオッサンとアポイントをとった。僕は同席はしなかった。すると、社長から連絡があった。


「崔! アカンわ。あのオッサン、愛人がほしいらしいわ」

「え! 秘書と運転手を募集したいって言ってましたよ」

「だから、愛人の秘書と愛人の運転手がほしいんや。そう言うてたわ」



 僕は社長に謝りまくった。







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路上占い、あれこれ⑤ 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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