人間の正体

 人間はみんなね…ネコなんだよ。

「ウソ!わたしネコじゃないもん!」

   いやいや、みんな自分がネコだって、気づいていないだけなのだよ。

 夜、お布団にはいるでしょ。まだ寝たくないなあ、

 お外で遊びたいなあって思っているでしょ?

 でも、寝ないと漆黒の闇から白い手が招くので、ついていってしまうと、

 もう戻ってこられなくなるよ。

「いやぁ、わたしもう寝る!」

 そしていつの間にか眠ってしまう。

 躰が深い眠りに入ると、人間の躰から、本体のネコが抜け出すのだ。

 …そうして、自由になったネコたちは、夜の世界を徘徊する。

 明け方近く、ネコはヒトの躰に帰ってくる。やがて朝になり、

 人間の躰が目覚めると、ネコは体の中で深い眠りにつく。

 人間は自分の正体に気づかないまま、昼間の世界を暮らすのさ。

「わたしの中にも、ネコちゃん、いる?」

 いるとも。

「わたしが寝ないと、ネコちゃん、自由に遊べないの?」

 そうだよ。

「わたし、寝る!」


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