アスファルトの理科

気がついたらボクは、道のいちぶぶんになって

ほかの奴らとくっついていた


猛暑がすぎたら突然寒くなって、ちょっと縮んだ

でも、隣の奴から離れられないんだ


見上げる街灯に、水は直線の動画だ

夜の中でボクの頬は打たれつづける


夏にへこんだ車のあしあとはみずたまり、川になって

ひくいところへと居場所を探してゆく


ちいとばかし、ボクの胸がスポンジだったらな

とうとう朝になり、ボクは空からやってきた雨の粒の

誰ともともだちになれなかった


どうしてボクはうまれたの


低い方へ流れた水は、海に逢えただろうか


やがて雲の切れ間からぐんじょういろがのぞいて、

おひさまがにらみをきかせると、

ボクの腕に染みていた水は、H2O

化学式で分解されて、蒸発してゆく


やがてボクも化学になって、雲にも海のなみにもなれるんだ

そしたらボクはH2Oと手をつないで


二度と、うまれたきた理由なんて

考えたりしない

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