素朴派の夜

岸辺を縁どる砂は三日月の弓

地球と月が海を綱引きする地平

望月と太陽の視線は不公平

風の精はとばりをおろす機会を読み


かつて海だったカルデラ湖の神

虚空との境目をかざる稜線

漆の朱と落葉松のいろづく前線

引力の海を旅する波


夜は様々な色が暗躍するとき

明るい黒も暗い黒も、ジャングルを縁取る

大地も女も蛇も象られる


地表の窓が愛を取り込み、ほどき

空だけがのがれてぽっかりと気ままに浮いている

亜熱帯の夜がよじれる

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