一、


昨日と今日の狭間にいる

心だけ堤防沿いを歩いている


言葉にしたら消えそうで

夜の川に映る灯火を見ている


素知らぬふりで掌を小さく振った

また次も同じ顔で笑うのだろう


彼のなかに棲みついた

臆病でがむしゃらな少年

風の少年

大人の目を盗んで…


私のなかに繋がれている

夜の少年

夜光性の鎖を足首に付けて

大人びた瞳をして…


無意味にしがみついてる葦の茂み

流れに逆らおうとして


朝が来ないように念じながら

夜の少年に頬を撫でられながら


また次は別の顔で泣くのだろう


二、

昨日と今日の隙間のなか

目元だけ水に映る灯を観ている


まぶた閉じたら消えたので

光の水を求め瞳ばかり泳ぐ


名も知らぬ花指先でそっと弾いた

いままだ同じ顔で笑っているから


彼のなかに密やかな

おのれで見つけられぬ少年

風の少年

恋人の目を避けて…


私のなかに棲みついている

夜の少年

夜光性のリボンを手首につけて

傷ついた瞳をして…


必死でつかみ損ねる葦の茂み

流れにのるまいと一縷の


夜が明けぬように祈りながら

夜の少年に耳を塞がれながら


また次は別の顔で泣くのだろう

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る