第20話
監督役の先生もいないのに、学級委員長の僕が教室にいなくてもしっかりと騒がずに自習を行えるのか心配だが、いつも率先してお遊びを始める生徒が電車の影響で学校に来れていないし、嘉根さんがいるから大丈夫だろう。大抵のクラスメイトは嘉根さんを高嶺の花扱いをしているので、わざわざ悪目立ちするようなことをしようとはしないだろう。嘉根さんに対して懐疑的な福田くんと相澤くんはそもそも真面目な人間なので心配する必要もない。
授業の開始を告げるチャイムが鳴ってから佐々木先生のところにいくのかと思っていたら、廊下で先生が待っているのが見えたので、急いでカバンをもって廊下へと向かう。カバンを持って行ったのは咄嗟に出た行動だったが、中に電源を切った携帯などが入っているため昨日の妹から聞いたオープンチャットなどのことを話す際に携帯が必要なので、良い行動だったと思う。
廊下を歩く際、佐々木先生は口を開かなかったが、先ほどの福田くんから聞いた盗聴器の話を思い出して佐々木先生に小声で話しかける。僕の杞憂で済めばいいのだが、心配するに越したことは無いだろうと思い、先ほどの話を交えて話す。
「佐々木先生、実は、先ほど友人らから聞いたのですが、嘉根さんが教室に盗聴器のような物を仕掛けていたらしいんです。もしかすると、理科準備室にもあるかもしれません。警戒しすぎだとは思うのですが、安全が確認できるまではお互い無言でいませんか。」
「盗聴器……?そこまでするのか。心底杞憂であってほしいが、提案は受け入れよう。」
そのあとは何も話さず、ただ廊下を歩き続けた。理科準備室に着き、先生が鍵を回して教室の戸を開ける。僕らは顔を合わせて頷き合い、コンセントや机の裏、模型の中などを探し始める。窓際のコンセントを確認する際、昨日はなかったコンセントタップがあることに気付く。声には出さず、佐々木先生を手招きで呼べば顔をのぞき込んできた。
先生は無言でコンセントタップを引き抜き、数秒手の中で転がしたかと思えばパカリと開いてタップに隠された小型の盗聴器が露わになる。
佐々木先生はそのまま水の入ったビーカーを用意して、その中に盗聴器を沈めた。ジッと嫌な音が鳴り、それをただ見つめていた。
盗聴器を一つ見つけることが出来たが、正直まだ隠されている可能性はある。僕はポケットからメモ帳を取り出して、このまま理科準部室で話し合いますか?と筆談で先生に尋ねる。
先生は僕の差し出したメモ帳に、あと十分探して無ければここで、とだけ書いて机の引き出しの中などを探しはじめた。僕も、薬品棚などをなるべく静かに探し始めた。
結果として、もう一つ盗聴器が見つかった。コンセントタップ型のものがあった場所とは反対側の、理科準備室の入口のカーテンの裏に堂々と置かれていた。そうなると、中央の机付近にもありそうだったが、いくら探しても無かったため、見つけた盗聴器を同じビーカーに沈めて佐々木先生が口を開いた。
「俺の準備室に勝手に上がり込むとは、全くいい度胸だな」
ビーカーに沈んだ盗聴器を棒で突きながら、先生は怒りを露わにしていた。此処は学校の一室だが、確かに佐々木先生以外の先生やサイエンス部も部員が少ないため利用が少ないのもあって、先生の私物が多く置かれている。普段はうまい具合に隠されているが、嘉根さんが盗聴器を隠すために棚を開けたりしたのであれば発見されたことだろう。
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