第18話

「……という訳なんだ」

「夏休みが無くなる……?そんな事いくら権利持ってるからって一人の提案が通るのか!?」

「なるほどね、だから悠は嘉根さんと行動していたんだ」


相澤くんは当然の怒りから混乱を露わにし、福田くんは冷静に僕の行動を振り返っている。それぞれらしい行動をみながら、僕は頷いて二人が事態を飲み込むのを待っていると、福田くんが先に口を開いた。


「実は、僕らが悠をここに連れてきたのは昨日、嘉根さんが教室の隅に盗聴器のような物を仕掛けていたのを見たからなんだ。」

「盗聴器……?」

「いや、しっかりは見ていないし、詳しいことはわからない。ただ、スマホとイヤホンを弄りながら嘉根さんの机の裏に何かを貼り付けていたり、教室前方のコンセントタップを別の物と取り替えていたのは確かだ。」

「でも、福田くんが教室に居るのにそんな大胆な事するかな……?許可なく学校の備品に物を取り付けるのは良くないだろ」

「はっ、否定の仕方がお前らしいな。俺も福田も教室にいた訳じゃない。男子トイレの掃除をしていたんだ。ちょうど終わって鍵締めに来たら、教室の戸も閉めずにキョロキョロとしてたから、盗みでもすんのかと思って福田と息潜めて見てたんだよ。」


なるほど、そういえば今週のトイレ当番は相澤くんと福田くんのいる班だった。でもそれなら他の人も見ていたのではないか。彼らの口ぶりからするに、二人しかいなかったように思えるが。


「トイレ当番って他にもメンバーいたよね。他の人は見てないのかい?」

「あぁ、僕と相澤くん以外のメンバーは嘉根さんに招集されて先に帰ったよ。前担任の事を聞きたいから僕ら以外を呼んで、どっか食事に行くって言ってた。」

「俺らは押し付けられたお掃除をキチンとしてたの!な!福田!」

「押し付けられたって言い方悪いよ、お掃除を放ってまでしてやるべき事だったんだろ」

「福田くんも大概言い方悪いよ……」


苦笑いでヒートアップする二人を宥めていれば、福田くんが真面目な顔で本題に戻す。


「それで、だよ。別に嘉根さんが掃除をサボる事やサボらせる事は今に始まった事じゃない。問題は盗聴器と見られる何かを貼り付けていた事、そんな人間が悠くんに何故近づいたのかって事」

「なるほど……それで嘉根さんが怪しい件に拍車がかかってしまったね。実は、もう一人僕らには協力を仰げる人がいる。その人の許可を得ないと話してしまっていいものかわからないから、名前を伝えることはできないんだけど、二人とも放課後に少し話せないかな」

「もちろん大丈夫だよ。友人の危機かもしれないのにそそくさと帰ったりしないさ」

「俺ももちろん残るぜ」

「二人とも……!」


友情らしい友情を体験する事ができ、感動していれば予鈴の音が鳴り響く。僕らは急いで、しかし決して走らずに教室へと戻っていった。

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