推しと根暗
@yukasakura
第1話
ある日夢を見た。
つまらない毎日に苦しみ、せめて夢の中だけでは、美しい夢をみたかった。
夢の中で、出会ったあの男の子にまた会えるだろうか。
夕日が沈みかける校舎の中で、ただ見つめ合っていただけだった。
ただの一瞬、すぐに夢からも覚めてしまう質の私が見れた夢の中、橙色の温かい光の中で、唯一私に笑顔を向けてくれたあの子は、現実でもあえるだろうか。
今日も、起きた。
腰も体も重い、きっと病気になりかけている。
でも、手の打ちようがない。
病気ではないから、誰も心配してくれない。
歯磨きをする。気怠い。
朝ごはんは今日はいらない。
食べられない。
学校に行かなくてはいけない。
登校中、昨日と変わらない景色の中で、ひとつだけ変わった。
閉店セールをしている。
本屋さん。今まで、近くにいたのに足も運ばなかった。大きい本屋さんじゃないと行かない。
なんか怖いし、子供の時に見てたアニメの本がまだ置いてある。
また学校だ。つまらない。
本屋のバイトがしたい。
でも、お母さんが許してくれない。
また学校だ。嫌だ。そのうちに高校に着いてしまった。
誇り臭い教室。派手な一軍の女子生徒。地味すぎて何考えてるのか分からなすぎる男子。
何もかもが理解できない。
唯一の楽しみは3つ。1つは、同じ中学から上がってきた男子を陰ながら押すこと。
私の分析では、彼も根暗だと思う。
ちょうど良く根暗。
常に成績のことや人間関係を気にして落ち込んでばかりいる私よりは自由な人だった。
ひたすらポエムを読んでいるような人だった。
彼のことを思い出すと胸がときめいたが、同じクラスにはなれなかった。
もう一つだけの楽しみは、ネットの掲示板で悩み相談を自分が解決してあげること。
あとになって思ったのは、とても傲慢だった。
悩み相談にのることで、自分も救われたかった。
落ち込んでる相手に頑張れとか、無責任なことだけは絶対に言わなかった。
ただ、相手の自己肯定感を上げることだけを考えていた。
そこだけは、唯一自分の良いところだと思っている
もう一つは、アイドルを押すこと。
1つ目の楽しみと対して変わらないどころか、2つ目の楽しみとも大して変わらない。
私は、自分の望みを人に託したかったのだ。
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