西の滅亡
千鶴ちゃんのあの大きさは想定外だったけど、さすがに負けることは無いだろう。美晴さんも余裕みたいだし、ちょっと遊んでやるか。
寝そべったままふたりに減った西の上位種のうち、小さい方(といっても、身長は35kmほどありそうだが)に指を伸ばし、今度は簡単に街の中に押し付ける。
「そんなに暴れると自分の街壊しちゃうよ。」
小さな女の子が両手足を必死にばたつかせているが、強靭な指先はビクともしなかった。
もうひとりの身長50kmほどの女が、巨大な足で街を踏み潰しながら寝そべっている超巨大女の視界から外れる場所までゆっくりと移動している。
視界から外れた瞬間、猛ダッシュで逃げるためだ。
ズゥッドォォンッ!
その目の前に巨大な壁が立ちはだかった。衝撃で足元の小さな建物や彼女から見たら蟻のような大きさの巨人種たちが根こそぎ跳ね上げられる。
「逃げられるわけないでしょ?」
直後に全身が締め上げられる。
上空では、残酷そうな笑顔で見下ろす敵の上位種の顔。ダメだ。戦っても弄ばれる。逃げることも出来ない。しかも、敵のひとりはこの星より巨大化できるのだ。こんな相手の優位に立つなんて、彼女たちの弱みを握らなければ不可能だ。
しかし、自分たちを蹂躙している一番好戦的で一番強そうなこの上位種には弱点など無いと聞いていた。しかも、自分たちの切り札がいとも簡単に蹴り飛ばされてしまったのだ。
「なす術がないってこういうことなのかな?」
彼女は自分を握りしめている巨大な手の、頭ほどもある親指の爪を眺めながら呟くしかなかった。
「ちょっと遊んでやるよ。でも、その前にこっちはいらないから・・・」
冴香は左手の指先で押さえつけていた上位種を摘まみ上げる。
ゴキッ!ボギッ!グチャッ!!!
そのまま、腰のあたりを捻り潰して絶命させ、さらに上半身と下半身を折り畳んで指の力だけで骨を砕き肉を引き潰しながらくるくると丸めていく。
「二匹もいると逃げられたら困っちゃうからね。即死できたからいいでしょ。」
ピンッ!と指先で肉塊を弾き飛ばした。
「じゃあ、アンタにはもうちょっと遊んでもらおうかな。言っとくけど逃げ出そうと思わない方がいいよ。アンタのスピードだと、二歩目で必ず捕まえられるから。」
冴香は右手で掴んでいた上位種を、再度街の中に解放する。
「せっかく上位種を玩具にできるんだから、ちょっとは楽しませてね。」
冴香の姿が突然消え去った。
消えた?どういうこと?
西の上位種の頭の中は混乱していた。あのセリフから今度はどんな風に弄ばれるのか不安で仕方が無かったのに。
でも今、目の前にあの恐ろしく強い敵の上位種の姿は無い。逃げるなら今しかない。誰でもそう思うだろう。
彼女は東の方を見据え、ここから脱出してあの島国をできるだけグチャグチャにしてやることでしか反撃できないと考えた。
ダンッ!ドゴォッ!
さっきのようにゆっくり移動して頃合いを見計らってダッシュしようとすると遅くなる。ならば、街に被害は出てしまうがいきなり最高速で出た方が確実だ。
西の上位種が力強く一歩目を蹴りだした瞬間、腹部に鈍痛が襲い掛かった。
二歩目を刻む前にそれ以上前に進めなくなっている。胃の中のものが全てこみ上がってきているのを我慢して一瞬瞑ってしまった目をあけると、褐色の逞しい太ももが自分の腹に突き刺さっているのが分かった。
(私に膝蹴りって・・・そんな巨大な女・・・)
恐る恐る顔を上げると、ニヤついた顔の敵の上位種が見下ろしていた。
「このサイズの方が楽しめそうだからね。それに、言ったでしょ?二歩目で必ず掴まえるって。フフッ・・・」
身長2mを超えるガッチリとした大女が身長150cmの小柄な女の腹に膝蹴りをして悶絶させている。それを3万倍以上に拡大した光景が、数百km以上離れたどこからでも見ることができた。
冴香は腹を押さえて蹲っている西の上位種の頭を掴むと、目の前に引きずり上げた
。ほぼ同じ体格の巨人種だったら頭を握り潰すくらいの力は入れているが、骨が折れるまでには至っていない。
「やっぱ上位種だね。頑丈そうじゃない。じゃあ、最初は力比べでもしてみる?同じ1万倍の上位種だからいい勝負じゃないとつまんないけどね。」
そのまま無理やり立たせ、両手で相手の両手をそれぞれ握りしめ、指と指が交差した所謂ラブ繋ぎのようにする。
「本気で抵抗してよね。じゃないと握り潰しちゃうよ。」
冴香が両手にほんの少しだけ力を入れると、相手の上位種が大きな悲鳴を上げた。
同じ上位種なのに、同じ1万倍なのになんでこんなに違うの?西の上位種は全力で相手の手を握りしめているのに、それを上回る握力で握り潰されそうになっている。
同じ体格の巨人種ならば赤子の手をひねるように簡単に屈服させていたのに、これではまるで自分がただの巨人種で上位種に弄ばれているような気にさせられる。
「くっそぉぉっ!」
渾身の力で巻き返そうとするが、自分よりふた回り以上も巨大な相手は笑顔のままでビクともしない。逆に地面を踏みしめている足が地面をズブズブと沈めて、街をさらに破壊していく。
どうあがいても勝てない。諦めて少しだけ力を抜いた一瞬で、背中から押し倒されてしまった。顔を横に向けると、衝撃で吹き飛ばされた何人かの巨人種がヨロヨロと這いまわっている。今の自分から見れば蟻のように小さな巨人種たち。間違いなく自分は上位種なのに、なぜ・・・自然と涙が溢れていた。
「なぁに?泣いてるの?だっさぁ。」
力比べで簡単に押し倒した敵の上位種を、冴香は馬なりになって見下ろしている。
少し可哀そうになって来た。上空を見ると、勝負がついたのか恐ろしく巨大な千鶴の姿も消えている。組み伏せた上位種が心なしか少しずつ小さくなっている気がする。たぶん、巨大化の限界を迎えたのだろう。冴香は掴んでいた手をそっと離した。
ドゴォッ!
冴香の拳が西の上位種の下腹部にめり込んでいた。一瞬両腕両脚を跳ね上げて、くの字になった上位種がたまらずに口から吐しゃ物をまき散らす。
メリメリッ!という音もしたので背骨か腰骨も逝ったのだろう。これでもう身動きは取れないはずだ。
冴香の視界の隅には、ちまちまと逃げようとしている巨人種の姿もちらほら見えた。
「最後は街ごと消してあげるね。」
そう言うと冴香の上半身は裸になり、巨大な二つの山が釣り鐘状に揺れていた。
(そっか、私、潰されるんだ。。。)
真上にぶら下がっている巨大な爆乳がさらに拡大されていく。敵の上位種が再度巨大化しているのだ。
(限界ないとか、反則だよなぁ・・・私たちなんか1万倍を維持するだけでも大変なのに・・・)
そう思いながら、首都全体を覆い尽くしても余りあるほどの巨大な胸を眺めていた。
馬なりのまま再度身長698kmに巨大化した冴香は、一度眼下を見下ろして既にアリンコサイズまで小さくなった西の上位種を確認すると、ゆっくりと上体を下ろしていった。最初に乳首から人間のようなものの感触が伝わり、そのまま降ろしていくと、それが簡単に爆ぜる。さらに乳房全体で街を押し潰すサクサクという感触が伝わってくる。寝そべった爆乳の周りに動くものがあれば、たぶん巨人種なので指先で薙ぎ払うことも忘れない。
こうして、西の大陸の首都があった場所に、こちらも途方もなく巨大なパイ拓が刻まれるのだった。
「さて、帰るか。」
冴香が一度座って大破壊の跡を見下ろしてゆっくりと立ち上がろうとした時、視界の隅に何か動くものを見つけた。
「うそ、まだいるの?」
拳を振り上げた時、声が聞こえた。
「潰さないでぇ・・・冴香ちゃんっ。」
「ん?美晴さん?」
よく見ると身長52.8kmの美晴が手を振っている。
「終わったみたいね。一緒に帰る?」
「はい。」
スルスルと小さくなり、冴香も身長69.8kmになった。
ふたりの超大巨人が西の大陸を踏み荒らしながら、東へと向かって歩き出した。
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