中学3年生、鏑木冴香の場合 4

「698cmで止まったみたいだね。どうする?冴香ちゃん。」

数日後、巨大化していない標準状態に戻った冴香の身長を測った由美子が、冴香にあてたデジタル定規の数値を読みながら聞いてみた。ちなみに体重は4tほどらしい。

「どうするって?」

「これからの生活のことよ。ここでしばらく一緒に暮らすか、元の家のひとり暮らしに戻るか、学校はどうするかとか、色々ね。まあ、ここで暮らすにしろ元の家に戻るにしろ改修工事は必要だからどっちでもいいんだけど。」

「あ・・・すみません・・・」

力加減がわからずに破壊した壁が数ヶ所、ひびが入った箇所は無事なところを見つけるのが難しいほどだ。天井にも2ヶ所ほど穴が開いている。

ここ数日で、冴香がやらかした数々だが、全く本気でなくてこれなのだ。ちなみに、今真由美は、前日に同じサイズに巨大化した冴香にコブラツイストをかけられ、ベッドの上で唸っている。

「かなり軽めにやったつもりだったんだけど・・・」

「骨は折れてないから大丈夫でしょ。明日には元気になるって。」

とはいえ、近隣では最大最強の警察官を、涼しい顔で瞬殺ギブアップに追い込んだパワー差は尋常では無いことは充分にわからされた。

「学校行くのもいいけど、かなり気を使わないと軽く叩いただけで相手の子壊しちゃうからね。」

「ですよね~。。。」

ケンカ最強だったとはいえ、基本は歯向かってくる者しか相手にしていなかった。それが、極端に言えば軽く肩を叩いただけで粉砕骨折させてしまうほどの強さなのだ。

学校に通うのなら細心の注意が必要だ。

「うちの学校、巨人種いないからなぁ・・・」

「あら、この前あなたを襲った子達は?」

「あ~、あれは隣町の子です。でかくなったんでわざわざ仕返しに来たんでしょうね。別にもう一回来たら優しく返り討ちにしてやるけど。あ~、だったらちっちゃいまんまの方がいいかなぁ。」

冴香が少し残酷な笑顔を見せた。


結局どこに住むかよりも着る服を優先することにした。今のサイズと30倍サイズの下着と制服、あと私服を少々。今のサイズの100倍の下着と私服(Tシャツと短パンとか簡易なもの)は欲しいというのが冴香のリクエストなので、由美子と真由美は上位種覚醒の報告とともに、冴香の服の制作指示(というか命令)に奔走する羽目になった。

「別に私は裸でもいいんだけど、学校行くのに最低でも制服は必要でしょ?」

豪語するとおり、冴香の身体は凄い!のひとことだ。元々2m近かった身長は3倍以上になった。ガッチリとした筋肉質の体格もそのまま大きくなった感じで、圧巻は巨大な胸だろう。130cmKカップの爆乳は500cm近くになり、カップサイズ測定不能クラスになっている。

「これさぁ、これ以上巨大化したら山だよね~。」

部屋の中で30倍に巨大化して乳比べをするが、一回り以上の差をつけられた真由美は完全敗北だ。

「冴香ちゃん・・・反則過ぎるよぉ。。。」

完全に立場が逆転した真由美はもう涙目だった。


「とりあえず学校行っとくかなぁ。高校も決めなきゃだしさ。由美子さん、どう思う?」

ある日の朝、なぜか思い出したように冴香が由美子に相談した。一応通常サイズ(といっても、身長7m近い超でか女だが)の制服は出来上がっている。なので、

「学校で巨大化しなかったらいいんじゃない?」

そっけなく答えた。

「あ~、でもあいつら来たら面倒だから巨大化するかもかぁ。だったら、最初から30倍で行くかなぁ。」

あいつらとは言うまでもなく隣町のふたりの巨人種のことだ。今の冴香なら巨大化しなくても充分勝てそうだが、巨大化すれば簡単に済む。ただ、それだけのことだ。

だが、由美子は軍から聞いたことを思い出していた。

「そう言えば、他の上位種様から『なるべく巨大化しないで欲しい。』って依頼があったって聞いてるけど。」

「それ?まあ、考えなくも無いけどねぇ。上位種同士が争ったら国が滅ぶんでしょ?そっか、だったら巨大化しないで行くかな。でも中途半端だなぁ、巨人種に覚醒したばっかってことにしておこうか。」

「そうね。『上位種であることを公表しないで欲しい』とも言われてるんでしょ?ちょうどいいんじゃない?」

「そっか、それもあるんだった。じゃあ、やっぱ覚醒直後の巨人種設定にしよう。」

由美子はホッと胸をなでおろした。


「そう言えば他の服っていつ頃来るの?」

巨人用テーブルの上で寝そべって寛いでいる冴香が、目の前の巨人用ソファに座っている真由美に尋ねた。

「一応30倍サイズと100倍サイズの下着が明日くらいには届くことになってたはずだけど。うちに入るかしら・・・」

100倍だとブラなど片乳だけで直径100m近くになるらしい。真由美が家の中を埋め尽くす巨大な下着を想像してボソッと呟いた。

「やっぱさぁ、巨大化した冴香ちゃん用の家って必要じゃない?」

「あれ?真由美さん、私と一緒に住むの、嫌?」

ちょっと冷たい笑顔で見上げると、真由美の巨体がビクンッと震える。

「そ・・・そんなこと、ないよ・・・」

身長約7mの冴香を見下ろす身長180mの真由美は身長差30倍近くもあるのに涙目だ。

「ふふっ、真由美さんって最初は凄く気が強そうだなぁって思ってたけど、けっこうビビりだよね。大丈夫だよ、ちゃんと私が守ってあげるから。」

クスクス笑いながら冴香は裸になって床に飛び降りて座ると、50倍の身長約350mに巨大化した。

「でもさぁ、100倍だとこの倍のでかさかぁ。確かにブラだけで家の中いっぱいになりそうだね。家というより100倍サイズのクローゼットでも作らせた方がいいかもね。」

「じゃあそうする?早速政府に話しておくけど。」

由美子は3人目の上位種担当の巨人種になっていた。政府や軍への指示は全て由美子が代理として行っている。

「他の上位種、文句言わないかなぁ。」

「大丈夫でしょ?彼女たちも気に入ったサイズの服は作らせてるみたいだから。」

「じゃあ問題なさそうだね。他の子と意味なく争いたくないからね。」

そう言って冴香は小さくなって軽くテーブルの上までジャンプすると、一瞬でスエットに着替えてしまった。


「そうだ。家ってもうじき完成だっけ?」

いつまでも居候という訳にもいかないと思っていたので、隣りに冴香専用の部屋を作ることにしたのだ。小坂姉妹に合わせた今の冴香の30倍サイズ用の建物である。

その隣りに100倍サイズ用のクローゼットを作ることになるのだろう。

「あと1週間もすればできるんじゃない?一応壁とかかなり頑丈にしてあるけど、たぶん冴香ちゃんの力には耐えられないと思うからその辺は気を付けてね。」

「大丈夫かなぁ。寝相悪いんだよねぇ・・・寝る時だけ小さくなるかなぁ。」

意外と真剣な顔で、冴香は悩んでいた。寝相の悪さは相当なものらしい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る