中学3年生、鏑木冴香の場合 3

翌日、冴香の身長は2mを軽く超えていた。間違いなく覚醒したようだ。

「服が・・・キツい・・・」

前日寝る前に裸で寝ようか悩んだが、覚醒しなかったらなんだか間抜けだし、覚醒すればどうせ着れなくなるんだからと普通に下着も付けたままTシャツとスエットで寝たのだが・・・

ブチブチィ・・・

元々身体が大きくガッチリとした体格で、胸板も女の子にしては分厚く胸も大きかったせいだろうか。最初に悲鳴を上げて吹っ飛んだのはブラのホックだった。

「ふぅっ・・・」

胸元の圧迫感は無くなったが、Tシャツも既にはち切れかけている。

巨尻を包み込むパンツはまだしもスエットは少し余裕があったが、こちらもパツンパツンになっていた。

結局冴香は、着ていたものを全て引き裂いて全裸になるしかなかった。


(覚醒したっぽいのは何となくわかるんだけど・・・)

確か、由美子も真由美も非番だと言っていたので、まだ寝ているのだろう。とはいえ、起きるまでテーブルの上で待っているのも退屈だし・・・

覚醒したんだったらそんなに危険はないだろう。と安直に考えて、ちょっと部屋の中を見て回ることにした。のだが・・・

リビングのテーブルの高さが30~40mはありそうだ。これ・・・飛び降りても大丈夫なのかな?たぶん10階建てのビルくらいの高さだ。普通だったら転落死の可能性が非常に高い。

結局、冴香はテーブルの脚にしがみついて降りることにした。のだが、半分も行かないうちに汗で手が滑って落下してしまった。

「いったぁ・・・くない?」

軽く尻もちをついた程度の感覚。普通種なら運が良くても骨折する高さだ。これは本当に覚醒したらしい。


だだっ広いリビングを歩き回って玄関へと向かう。バリアフリーでは無いので1mほどの段差があるが、さっきこの20倍近い高さから落ちても平気だったのだから気にならない。

それよりも、玄関に置いてある2足のでか靴の方が気になった。

(たしか、ふたりとも100倍くらいだったよなぁ。真由美さんが180mで、由美子さんが160m。ってことは、こっちの大きい方が真由美さんの靴かぁ。)

こげ茶色のパンプスの前に立つと、その巨大さを改めて感じてしまう。全長30mはあるだろうか。ダンプカー3台、いや4台縦に並べないといけない大きさだ。

「でっかいなぁ、これ、きっと真由美さんの靴だよなぁ。ん?」

踵の辺りに貼りついているものに気が付いた。近づいてみると、白い車のトランクのようにも見える。ということは、踵の下に車があるってこと?それにしては、踵は完全に床についている。

「持ち上げられるかな?」

普通に考えれば100倍サイズのパンプスなどビクともしないと思うのだが、覚醒したなら少しは強くなっているんじゃ?と考えたのだ。

冴香は、両手を踵の少し浮いているところに差し込んで持ち上げようとした。ん?少し動いた?その時だった。パンプスの重さが、突然無くなったのだ。

「のわっ!」

素っ裸で万歳をするという、なんとも間抜けな格好がウケたのか、上空から笑い声が轟いた。

「冴香ちゃん、何やってんのぉ?ウケるんだけどぉ。」

見上げると真由美がしゃがんでパンプスを指先で摘まんでブラブラさせてクスクスと笑っていた。冴香が赤面したのは言うまでもない。


冴香は手短に、覚醒したかもしれないことと、今のうちに普通種視点の巨人種の家を見てみたかったことを話した。

「なるほどねぇ、暇だから巨人の家を見学してた・・・と、で?なんで、私の靴動かそうとしてたの?覚醒したっていってもまだその大きさでしょ?これ、片方だけで300tくらいあるんだけど。」

つまり巨人種とはその300tを片手で軽々と弄べるほどの力をもっているということか。改めて巨人種の強さを感じてしまう。

「靴の踵になんか車の残骸が貼りついてたからさ、真由美さん、何を踏み潰したのかなって。」

そう言われた真由美が靴の裏を見てみると、確かに何か貼りついていた。形からすると乗用車のトランク以外の場所だろう。4つあるはずのタイヤは前輪部分だけが見事に破裂して車体と一緒に貼りついている。

「あんまり気が付かないんだよねぇ。」

そう言いながら、トランク部分を摘まんで、ペラペラに潰れた車体を靴裏から引き剥がして丸めてしまう。

「一応警察官だから気を付けてはいるんだけどねぇ。」

真由美は舌を出して、丸めたスクラップを弾き飛ばした。


「でもさぁ、冴香ちゃんの身体つきって、凄いよね!本当に中学生なの?」

真由美の手が伸びたかと思うと、冴香は簡単に摘まみ上げられてしまった。親指が胸に押し当てられ、潰されそうになる。冴香にとっては一昨日あいつらに摘まみ上げられたことを思い出して全身が強張りそうになる。が・・・

「ちょ・・・真由美さんっ!何やってんの?なんで指で人の胸揉んでるのよっ!」

「いやぁ、冴香ちゃんの胸、大きいなぁと思って!私も大きさには自信あるんだけどなぁ。やっぱ、いいよねぇ、十代って!」

「真由美さんだってまだ22でしょ?充分若いじゃん!ってか、感じちゃうって・・・」

「思わず揉みたくなっちゃった。ほら、巨人種って基本的にエッチだから。一応加減してるけど痛かったら言ってね。」

(ていうか、この子ヤバイ!普通種だったらとっくに肋骨と内臓が潰れるか背骨がへし折れるくらいの圧力かけてるのに、全然痛がってない。。。)

「おはよぉ・・・って、何やってんの?」

由美子も寝ぼけまなこをこすりながら部屋から出て来た。


「ふぅん、でも確かに覚醒したっぽいわね。昨日からずいぶん大きくなってる。でも、冴香ちゃん、凄くいい身体してるのね。」

由美子が舌なめずりした。

「由美子さんまで?もう、姉妹揃ってなんなんですか?」

「仕方ないわよ。冴香ちゃんも覚醒したんだからエロくなると思うわよ~。」

由美子は何やら楽しそうだった。


大量の中途半端に大きな服の中で、冴香が着れそうなサイズの服を選んでいる時、真由美が由美子にそっと耳打ちをした。さっき摘まんだ時に試した結果を教えるためだ。

由美子は少し考えて、冴香にそっと手を伸ばした。

「冴香ちゃん、ちょっと実験させてくれない?」

Tシャツにスエット姿に着替えた冴香をそっと摘まんで床に下ろす。

「実験って・・・何するんですか?」

冴香も思わず身構えてしまうが、由美子はさほど気にせずに話を続けた。

「たいしたことじゃないわ。そうね、真由美くらい大きな冴香ちゃん自身をちょっと想像してみてくれる?簡単に言えば巨人になった冴香ちゃんの姿。」

「はぁ、そのくらいなら・・・」

冴香は目を閉じて、この部屋のサイズに見合った自分の姿を想像してみた。たぶん、100倍くらいだよね。と思いながら・・・

ゴゥンッ!

「はにゃっ?」

どこかに頭をぶつけた?ってかどこに?目をあけると、目の前に肩ほどの身長の女性が立っていた。

(あれ?この顔って、真由美さん?)

足元でしゃがんでいた女性が立ち上がった。こちらの身長は肩まで届かない。冴香の爆乳とご対面だ。そして、たった今着たばかりの服はどこにもない。なにかとても小さな埃か塵のようなものがパラパラと舞い落ちている。

「本当に上位種様に覚醒するとはね。ちょっと、というか、かなりビックリな出来事ね。」

冴香を見上げながら努めて冷静に話す由美子だったが、膝から下はガクガクと震えていた。

「私が、上位種?なんでわかるんですか?」

聞きながらも、頭がくっついた天井がメキメキと悲鳴を上げている。

「その前に、もうちょっと小さくなってくれる?そうね、今の半分くらいがちょうどいいかな。」

由美子が言い切る前に、ストンッ!という感じで、冴香が小さくなった。身長は140mくらいだがまだじわじわと大きくなっていた。


「上位種が身体の大きさが変えられるのはわかったんですけど、巨人種はできないんですか?」

ソファに座った冴香が、テーブルを挟んだ向こう側で正座している由美子と真由美を軽く見下ろす感じになっている。由美子曰く、上位種と巨人種の力関係だと思って欲しいということだ。

「巨人種が身体の大きさ変えられたら、こんなコロニーなんかいらないでしょ?」

「確かにそうですね。でも、上位種ってそんなに凄いんですか?あんまり実感無いんだけど・・・」

「そうねぇ、外国の上位種様は1万倍くらいに巨大化できるらしいわ。私たちでも虫けら扱いできる大巨人よ。」

「へぇ~、私もそのくらい大きくなれるのかなぁ?そしたら、真由美さんのおっぱい、指で揉み回してあげますね。」

冴香としては冗談のつもりだったが、真由美は本気で青ざめていた。

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