中学3年生、大神千鶴の場合 2
ある日、取り巻きのひとりがいつものように千鶴の許に来たのだが、様子が少しおかしい。何かひどく怯えているようだ。
「あ・・・あの、ね。友梨佳、様が・・・」
そこで口籠ってしまう。
「ああ、あの子?どうかしたの?」
「え?うん・・・いや、やっぱ、いい・・・」
そそくさと教室を後にする。やっぱり何か企んでるなぁ。そうすると、今日あたりかな?何となくそんな気がしたので早めに帰宅することにした。
帰宅して着替えてベッドの上でスマホを弄っていると、想像通り地響きが聞こえて来た。この辺りでは巨人種は友梨佳しかいない。あとは、たまに巡回してくる巨人の婦警さんくらいだ。
箪笥が倒れそうな揺れを最後にピタッと止まった。同時に母親が青ざめた顔で階段を駆け上がってきた。
「ち・・・千鶴、ちゃん!たっ!大変っ!」
「あ~、大丈夫。友達が迎えに来ただけだから。」
慌てる母親をなだめて窓を開けると、そこには友梨佳がしゃがんで家を見下ろしていた。
「可愛いお家だね。ねえ、千鶴ちゃん。」
「あ~、ちょっと待ってて。すぐ行くから。」
機先を制されたのが気に入らなかったのか友梨佳は少しムッとした顔になるが、笑顔は崩さない。
「お母さん、ちょっと出てくるね。遅くなるけど心配しなくていいから。」
それだけ言うと、へたり込んだ母親を背に千鶴は家を出て、玄関前に降ろされていた巨大な掌に乗った。
「千鶴ちゃん、アタシが行くってわかってた?」
ズシンズシンと地響きを立てて歩きながら、友梨佳が掌に乗せている千鶴を見下ろす。
「ん~、何となくかな。今日、アンタの子分が何か言いたそうだったから、そんな気がしたんだ。で?何が知りたいの?」
巨人種の掌というある意味処刑台の上に乗っているというのに全く動じていない態度に友梨佳は得体の知れないものを感じていた。
それを確かめたくて、千鶴を家に連れてくるように命令したのに・・・
覚醒して初めて登校した日の千鶴の態度にもの凄い違和感を持っていたのだ。巨人種を目の前にしてなんであんなに平然と受け答えできるのか不思議だった。
巨人種の自分でさえ、3倍以上巨大な婦警さんを見上げるだけで緊張してしまうというのに・・・
「うちに着いたら話すよ。」
それだけ言うと、友梨佳はまた前を向いた。
友梨佳の家は海岸沿いの住宅地のさらに先にある。途中何軒か破壊されている家を見かけたので、たぶんこの辺で遊んでいるのだろう。
逃げ出す者も多いのか、夕方だというのに半分以上は家の中が真っ暗だった。
「着いたよ~。」
巨人種用のドアを開け、中に入る。千鶴はテーブルの上に降ろされた。
「へぇ~、大きいだけで普通の家とあんまり変わんないね。いや、普通の家にあんな裸の人間いっぱいいないか。」
同じテーブル上の向こう側に全裸の男たちの姿が見える。20、いや、30人くらいいるだろうか。全員なぜか殺気立っているようにも見えた。
テーブル前のソファに友梨佳がどっかりと座った。いつのまにか上半身裸になっていて、可愛らしい胸がプルンと揺れる。
「これ?なんかさぁ、巨人種になるとエッチになるって本当なんだね。すぐムラムラしちゃって、そういう時のために飼ってるんだ。」
友梨佳が無造作に、ひとりの男を摘まみ上げ、右胸にしがみつかせた。Cカップほどのサイズだが、ブラのカップでさえ直径3m以上はあるのだ。
男は必死にまだ柔らかい乳首にしがみつき、必死に愛撫をしている。
「ふふっ、くすぐったい。千鶴ちゃんもどう?好きなの選んでいいよ。」
軽く喘ぎ声を上げながら、友梨佳は男がしがみついている胸に軽く手を当て、必死に愛撫している男の頭を人差し指で軽く押し付ける。
(窒息でもさせるのかな?)
全身を使って巨大な胸を必死に揉み回そうとしていた男に変化が訪れる。全身がピクンッ!と痙攣した様に見え、両手足が力なく垂れ下がって頭部だけが友梨佳の指によって乳首に押さえつけられぶら下がっているようにも見える。
「ん?もうおしまい?使えないなぁ・・・」
そう呟いた友梨佳がそのまま胸を軽く掴む形になると、男の姿は手の中に隠れ足先だけが辛うじて見えるだけになった。
ゴギッ!ボギッ!ブチュッ!
友梨佳が胸を強めに揉んだのだろう。挟まれていた男の身体が破壊される音が聞こえてくる。30倍ともなれば力は普通種の3万倍近くになる。軽く握っただけで普通種の身体など簡単にミンチにしてしまえる。
赤い液体が胸と手の間からボタボタと滴り落ち、胸のすぐ下のテーブルの上は赤い水たまりが出来上がっていた。
「普通のこびとだと弱すぎて全然持ちが悪いんだよねぇ。千鶴ちゃんもそうじゃない?普通種にしてはかなり大きいし強そうだもん!」
友梨佳が直径30cmほどの肉団子になった普通種だったものをゴミ箱に投げ捨てた。
「私、そんなに強くないよ。いくらでかくても普通種が巨人種様の力に敵う訳ないじゃん。」
言い方が悪かったのか言った内容が悪かったのか。どうも、千鶴のセリフが友梨佳の気に障ったらしい。
「そうかなぁ、ひょっとしたら千鶴ちゃんの方が強いかも知れないでしょ?ちょっと力比べしてみようよ。」
真っ赤に染まった友梨佳の手が伸びてくる。う~ん、あのばっちい手に掴まれるのは嫌だなぁ・・・それに、たぶん友梨佳は軽く掴み上げて徐々に力を込めていくのだろう。
(私が苦しんでる顔、そんなに見たいのかな?)
「そろそろいいかな。」
千鶴がそう呟いた瞬間、友梨佳の巨大な手が千鶴の全身を鷲掴みにした。。。はずだった。
「えっ?うそっ・・・どこに・・・」
普通種を掴んだ感触がどこにもないのに気づいた友梨佳が手を広げると、真っ赤に染まった掌があるだけで他には何もない。
(そんなに素早く逃げられるの?)
「どこ行ったのよっ!千鶴っ!出て来なさいよっ!」
声を荒げて部屋の中を見回すが、千鶴の姿はどこにもない。怒りが友梨佳の全身に充満する。拳を振り上げてテーブルに叩きつけ、テーブルを真っ二つにへし折ってしまう。
テーブルといっても巨人種のサイズに合わせただけで強度はせいぜい鉄筋コンクリートの普通のビルと同程度かそれよりも弱いのだ。30倍の巨人の膂力であれば簡単に破壊できてしまう。
ただ、テーブルの端で震えていた全裸の男たちは全員が跳ね上げられ、数十m落下して床や破壊されたテーブルに叩きつけられる羽目になった。
荒くなった息を何とか整えて少し冷静になった友梨佳はあたりを見回して宣言した。
「わかった。じゃあ逃げればいいわ。その代わり、今からアンタの家まで散歩に行くことにするから。どういう意味か分かるわよね。」
「やっと本性現したのね。覚醒した時からそのつもりなんでしょ?わかりやすいんだからいちいち演技する必要無かったと思うけど。」
どこからか、千鶴の声がはっきり聞こえた。
「そんな下ばっかり見てないで顔上げたら?」
千鶴は床の上やその近くばかり探している友梨佳の姿を面白おかしく眺めていた。下しか見ずに足元に散らばっているテーブルの残骸や椅子を蹴飛ばし、落下していて身動きが取れない男たちを平然と踏み潰していく友梨佳の姿が滑稽に映っていた。
「私に殺されるのが怖いんでしょ?ちょこまか逃げてないで出て来なさいよっ!」
友梨佳の手が這いつくばって必死に逃げようとしている男たちをふたり纏めて掴み上げ、握り潰して壁に叩きつけた。壁に真っ赤な水が入った水風船が割れたような跡が広がる。
「もうちょっと顔上げたら?アンタ相手に逃げも隠れもしないって。本棚にいるからさ。」
その声を聞いて顔を上げ、本棚を見た友梨佳の眼には確かに千鶴の姿が映っていた。でも、いつの間にあんなに高いところに?
友梨佳向けに作られた本棚の高さは約30mはある。その本棚の上に千鶴が全裸で立っていたのだ。でも、なんであんな高いところに?本棚には普通種が登れるような段差も階段もない。なのに・・・
いや、そんなことはどうでもいい。友梨佳の頭の中にはこのクソ生意気なこびとを残酷に殺すことしか無かったのだ。
「動くなよっ!クソちびっ!」
友梨佳の拳が唸りを上げて振り下ろされ、本棚に直撃する。しかし、易く本棚を破壊した拳には骨を砕いた感触も肉を潰した感触もなかった。
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