第2話 バス停
次の日
そんな訳で、わたしとクロは自宅近くのバス停までやって来た。
バス停は日除もなく直射日光が照り付けており、なかなかの暑さだ。とても数万年後の氷河期を待ってられないが、バスは五分後に来るので、まあ問題はない。
そして、今回の作戦はこうだ——
「今回の『バス停うっかり乗り過ごし事案』は、このうっかりが重要なポイントとなる。つまり、わざとバス停を数本乗り過ごしてから降りても、あのトリップ感は味わえないのだ」
脳内のわたしは眼鏡をして偉そうなヒゲを生やしている。
「そのうっかりを生み出すのが寝過ごしじゃ!」
脳内わたしは偉い学者になりきっている。
「そのためわたしは、昨夜遅くまで長編小説『指輪物語』を読書することで、寝不足状態を作り上げることに成功したのだ!お陰で今とても眠い。わかるね?クロくん」
「ああ、はい」三文芝居を見せられてウンザリ気味のクロ。
「このように寝不足のままバスに乗ることで、意図的に『うっかり乗り過ごし』を作り出し、あのトリップ感覚を最大限まで引き出せるように準備したのじゃ!」
——我ながら完璧な作戦だ。
残念ながら指輪物語は、指輪を捨てるところまで読めずに寝落ちしてしまったが……フロドの代わりにわたしが頑張るとしよう。
五分後。
あくびをしながら待っていると、時間通りにバスがやって来た。
いつも通り、乗客はまばら。わたしの特等席も空席で歓迎してくれているようだ。
クロは慣れた動きでわたしのリュックに入り込み、わたしたちはバストリップの旅に出発したのであった。
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