私たちの愛の唄
私は決して恵まれているとは言えなかったのだろう、だがそんな不幸だった過去に執着していても仕方がない。
だって私は今とても幸せなのだから。
私は気が付いたら孤児院にいた。
かすかな記憶に残る両親の顔は私のことを何の興味もなさそうに見下していた。
学校にいるときは幸せではなかったが特に不幸でもなかった、孤児院でも私は特に絡まれずに育っていた。
おそらく私は孤独であったのだろう。
一人きりでいることは慣れていたが、それでも人とのコミュニケーションがないと人間はだんだんおかしくなっていく。
そのうち私は認められるためだったら何でもするようになった。
SNSに写真を投稿すれば大きな反響があった。
それを学校で言えばたくさんの友達と繋がれた。
自作のコスプレを着て出かければ色々な声掛けをされた。
承認欲求が次第に肥大化しているのはわかっていたけど止まらなかった、止められなかったもっと認められたい。もっと知ってほしい。そう思ううちに私はあの人と出会った、その人は私の承認欲求を満たしてくれた。受け止めてくれた。
次第に私の欲求は彼に向いていった。
私以外とかかわらないでほしい、私だけを見ていてほしい、ずっと隣にいたい、ずっと褒めてほしい、そんな思いはやがて行動にも表れるようになった。
まずはあの人の私生活を知ろうと思った。
彼がどこに住んでいて、何が好きで、なにがきらいで、何に癒されて、何に嫌悪するのかを徹底的に調べ上げて彼の理想に少しでも近づこうと頑張った。
そして学校でもあの人に関わろうと頑張った。
あの人の友達と仲良くなってあの人を紹介してもらってあの人とお出かけもしたし旅行にも行った卒業の日は2人でカラオケにいって山の中で濃密な空気も味わった。
あの人の周りにいる人を排除してあの人に好かれるために手段は択ばなかった。
そう、すべてはあなたのために
だから、わたしからぜったいはなれないでね
周りと関係を断って、二人で過ごせる場所に行って、二人以外の人間はいらなくて、全部全部あなたのために、私たちのために、二人でいるために、離れることが無いように一生懸命考えたの。
だからあなたもわかってくれるよね
だからあなたもみとめてくれるよね
あなたはあっちでもっしょにいてくれるよね
わたしたちはずっといっしょ
わたしたちはふたりでひとつなの
だから
いまわたしもあなたのもとにいきます
結末はあなたの手で 港の非常食 @minato1129
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