皆、今いくよ
音楽が好きだった。
きっかけはとある駅の前で歌っていたバンドマンだったのだろう。
だがもう今となってはどうでもいいことか
音楽が好き、本気で向き合っている、直向きな努力そんな程度で回るほど世界は甘くはなかった。
確かに俺の真剣な気持ちに家族も納得してくれて、いろいろなことをしてくれた。楽器を買ってくれた、音楽教室に行かせてくれた、夢のために専門の学校にも行かせてくれた。幸い俺には才能があったらしい、特に大した苦も無く高校を卒業し親友とバンドを組んだ。あの頃は幸せの絶頂だったのだろう。
しかし
しかししかし
しかししかししかししかししかししかし
幸運の絶頂にいるということは後は転がり落ちるだけということらしい
妹が死んだ
俺がバンドをやっていることで虐めを受けていたらしい、遺書に書かれていた「ごめんね」「きにしないで」「がんばって」など俺を気遣う言葉の数々が俺の心を蝕んでいった。
両親が死んだ
妹の死で軽い放心状態だった両親は買い物の帰りに交通事故に巻き込まれたらしい。病院に駆けつけるとまだ生きているのではないだろうかと疑うほどに温かい両親の骸があった。
それから俺はバンドに打ち込み続けた、家族の死を乗り越えた悲劇のバンドグループということで俺たちは瞬く間に名を挙げて有名になった。妻ができ、家族が増え、調子が良くなったころには前回の転落なんて忘れていたのだろう。
相棒がバンドの金を盗んで消えた。
妻が口座の金を全て持って逃げた。
妻と相棒のスキャンダルが世間に広がりバンドの名は有名だっただけに大炎上、最早続けるだけでなく街を歩くにも後ろ指刺されるようになった。
結局相棒と妻は警察に捕まり、俺には何も残らなかった
真夏の生暖かい夜風が体を撫ぜる
俺はどうすればよかったのだろう
なあ皆、教えてよ
一歩を踏み外した
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