第2話 目隠しシートのメリット
目隠しシートにしてから一か月は何事もなく過ごしていたが、最近気になることが出てきた。
夜になると何かの気配を感じる。 ―――窓の向こうから。
視線と、ヒトの気配? それだけではない。カーテンの向こうから、何か微かな、不規則な音がするような気がした。カツン、カツンと。風の音とは違う、硬いものが何かに当たるような、妙に生々しい響きだった。
何回かカーテンを開けても、そこには目隠しシートに覆われた夜の闇が広がるだけだ。 目隠しシートのせいで窓の外は見えない。それでも、音が止むことはなく、そのたびにひんやりとした空気が部屋に流れ込んでくるような気がした。
ある日、バイトを終えて帰宅した私は部屋の異変に気付いた。
目隠しシートが剥がれていたのである。
掃き出し窓なので、目隠しシートを3等分して窓の一面に3枚のシートを貼り付けていた。 そのうち、一番下のシートの端の方が剥がれていたのだ。
水をつけて貼りなおせばよいのだが、バイト終わりでそんなことをする気力もない。 それに、よく考えれば、一番下のシートはいらないかもしれない。
「そういえば、一番下っていらないよね…」
中途半端に剥がれたままにしておくのも嫌だったので、面倒くさい気持ちと、もう大丈夫だろうという安易な判断が混じり合い、思い切って一番下のシートを完全に剥がしてしまうことにした。
カーテンを閉めて、剥がしたシートを何とか折りたたんでごみ箱へ。
燃えるゴミで処分できるのも目隠しシートのメリットだ。
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