はがれた目隠しシート

久保隆@2分で読める怪談ライター

第1話 常闇の家に

私は常闇の家に住んでいる。


単純な話、窓が北側にしかないのだ。


日当たり悪い問題は、この春から女子大生となった私の関心事の一つである。


・大学キャンパスまで徒歩7分

・ワンルーム

・家賃4万5000円(管理費込み)

・4階建ての2階

・バストイレ別

・外観は少しレトロな白のタイル貼りで可愛い


問題の我が家は窓が北向きなことを除けば、最高の優良物件だ。


引っ越し前に母がニッセンで揃えてくれた遮光レースカーテンは、昼夜問わずプライバシーが守れる一方、外は晴天でもこの部屋を常闇へといざなってしまう。


ある日、YouTubeショートから窓に目隠しシートを貼っている動画が流れてきた。


目隠しシートは名前の通りシートになっていて、窓に直接貼り付けて使うものだ。 しかも水をつけて貼り付けるので、何度も付け直しができる。 不器用な私にうってつけだった。


ネット通販で2セット購入してさっそく窓に貼り付けた。いい感じだ。 遮光レースカーテンほど光を遮らないのに、部屋の中が外から見えない。


DIYというと大げさだが、達成感もあり、今の部屋が自分の部屋になっていく感覚がうれしかった。


スーパーのバイトに向かう前に、窓に面している通りから自分の部屋を見上げると、自分の部屋だけ窓に特徴が出てしまうが、そこは気にしないことにした。


だが、その日以来、通りを歩く人の視線が、自分の部屋の窓に吸い寄せられているような気がしてならなかった。

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