第二風め
『今日も天気はわるいのかなぁ』
_―“やっぱり好きなんだ”って言えた朝は、雨のままであたたかい_
Scene 1|目覚めの風は、まだ昨日の続きだった
_昨晩、なかなか寝つけなかった。_
はるとあかねのこと。
一本の傘の下にいたふたり。
その光景を思い出すだけで、胸の奥がざわめく。
→ 詩織との電話で涙が止まらなかった。
→ けれど――その涙の正体が、ようやくわかった。
_「わたし、やっぱり、嫌だったんだ。
でもそれって――好きなんだ」_
Scene 2|ふたたび“ただいま”を言う朝
目元は少し腫れていたけれど、心はすこしだけ軽くなっていた。
つむぎ:「お母さん、おはよう
昨日は……ごめんね」
母:「おはよう」
それだけで十分だった。言葉にしなくても、風は届いていた。
→ 玄関を開ける。少し強めの風が吹く。
つむぎ:「……今日も、天気わるいのかなぁ」
その声には、“進む覚悟”が宿っていた。
Scene 3|交差する朝のはじまり
教室に着いて、席につくつむぎ。
_「……詩織、今日おそいな」_
→ いつもより静かな朝。詩織がいないだけで、少し不安。
同じ頃。昇降口では詩織が誰かを待っていた。
やがて、あかねが登校してくる。
詩織:「あかね。……おはよう」
あかね:「……おはよう」
詩織:「ちょっと、いいかなぁ?」
Scene 4|詩織とあかねの対話
詩織:「……はっきり聞くよ。
はるくんのこと、好きなわけ?」
あかね:「……なんで言わないといけないのよ」
詩織:「あの時、聞いてたよね。
つむぎとはるくんの話――もう両想いじゃん」
詩織:「……わかってたでしょ?」
あかね(涙目で):
「わかってるよ……。
でも意地悪しないと、気が済まなかったの」
→ 詩織、息をのんだあと――やさしく笑う。
詩織:「あたしも、はるくん好きだったし……わかるよ。
でも、あんな“中古”なんて忘れて!
イケメン彼氏でも探そ、ふたりでっ♪」
→ あかね、吹き出して笑いかける。
→ 少しだけ、気持ちが軽くなった朝。
Scene 5|教室に戻る風たち
→ 詩織、教室へ。
→ 扉を開けて、いつもの調子で声をかける。
詩織:「つむぎ〜おはよう。寝坊しちゃったっ。でへへ」
詩織:「……寂しかった? かまってちゃんなんだから〜」
つむぎ:「もう〜やめてよねっ(笑)」
→ そのやりとりに、静かにあかねも入室。
通りすがりに、ぽつりとつぶやいた。
あかね:「……ごめんね」
→ つむぎはなにも言わず、ただ小さくうなずいた。
→ それ以上、言葉にしなくても伝わる風がそこに吹いていた。
→ 教室の窓が、そっと開いて。
→ 湿った空気のなかに、やわらかな風が流れこむ。
---
Scene 6|“朝比奈つむぎ”の名乗り
授業が始まる直前。
つむぎはスマホを開いて、前の席にいる詩織にLINEを送る。
『詩織、いま返事いらないけど……
わたし、高月くんのこと、すきなんだと思う』
→ 詩織、スマホを見てから返信せず――
→ 両手で大きな〇を作ってふり返る。
> 詩織(口パクで):
**「朝比奈つむぎは、はるくんが好きです」**
→ つむぎ、照れ笑いながら頬を染める。
→ 胸のなかはまっすぐで、やさしくて――すこし誇らしかった。
Endingモノローグ(つむぎ)
“好き”って、ちゃんと自分で言えた朝。
誰にも言ってもらえなかった名前を、
自分から名乗った朝だった。
今日も、天気はわるいかもしれないけど――
_気持ちは、昨日より前に進んでいた。_
_それなら、ちゃんと灯った朝だと思う。_
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