現〈憤り〉

鮮やかな記憶が点々と蘇る


楽しい記憶、びっくりした記憶、嬉しい記憶。



けどそのフラッシュバックの最後に感じるのは“憤り”ただその一言だった。


なぜお前が。


なぜお前が。悪魔がさくまの顔をして話しているのだ


いや、こいつはさくまなのか?


わからない


わからない


何が起きてるの、一体


「なんだぁ、無視か?」


「…気安く呼ぶな」


喉が潰れそうだった


出現場所も、行く先も何もわからない感情が頭の中を駆け巡り、思考を邪魔する


「はははっ、にちかにそんな顔をされる日が来るとはな。お前も、成長したよ」


わかったような口を聞くな


さくまはどこにやった。どこにいった。


さくまに何をした


そもそもお前は地獄に行ったんじゃないのか


どうしてこの世で姿形を持って生きている


どうして



どうして



どうして



聞きたいことはたくさんあるのに、口が一歳動かない


混乱しているんだ



冷や汗が止まらない


震えも止まらない


時間が以上にゆっくりだ


「恐ろしくて震えてんのか?愉快だな」


「…どこに」


どこにやったんだ、さくまを


「ん?どうした。はっきり話せよ。聞こえねぇからな」


「どこにやったんだ、さくまを」


まっすぐで


まっすぐで、まっすぐで


綺麗で、かっこいいあのさくまを



「どこに!!」




後ろから、火傷しそうなほどの熱風が吹き私は言葉を止める



「火属性魔法第二、炎天夏日」


ひなたの声であった


「忌まわしき悪魔め。私が葬ってやる」


「あははっ、お前は魔法使いか!!」


ゆらりと攻撃をかわし、空中でケタケタ笑う


「そしてにちか!さくまはどこにやったと聞いたな?」


悪い笑顔を浮かべる悪魔をみあげながら、私も攻撃姿勢に入る


私は太陽のように剣を使えないし、ひなたのようにたくさんの魔法も使えない


基本丸腰スタイルだ。


さくまに教えてもらった戦い方。



悪魔はくるりと着地してこちらへ来る


「聞いたさ、さくまはどこにやったんだこのゲス野郎が」



悪魔は私と2メートル弱の距離を取る


右足を大きく後ろに下げ、左足を曲げる



左手は顔を隠すように配置して、右手を地面につける


「…っ」
























私が、今からしようとしていた姿勢だ
















悪魔の姿が、いつかのさくまと重なった














__「もっと膝曲げる!」

__「こ、こお…?」

__「そうだ!」

__「なん、でこんなに膝曲げるの。しんどいじゃん」

____「俺もお前も身長がないからだ。正面衝突したら絶対負けるからな。こうして下からくぐり込むんだ。相手の一番手薄な、足から潰す」

__「…えぇえー、」

















「答えてやるよ、お前の問いに」



















うしろに出した右足で、地面を強く蹴る





その瞬間に地面はへこみ、もう私の目の前へ来ていた











「にちか!」













「俺が、さくまだからだよ」

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