再会…?〈違和感〉
私は叫んだ
彼の名前を。
振り返る
誰もいない
なぜいない
短く、単調な文が頭を流れる
幻聴
幻
夢
記憶
「さく…」
一度前を向く
「…」
強い風が吹いた
「__ひさしぶりだなぁ」
ひどく動揺した
そいつからは、悪魔の気配がした
あのとき、村を焼き払った憎たらしい悪魔の気配
でも、声が違う。
まだ、姿が見えない
強い風の中飛ばされてくるピースが、ゆっくりと集結して足から腰、腰から胴へと
形を作る
「…ふー、ふー…ッッッ」
村を燃やされた、さくまを殺された
そんな激しい怒りが、私の体の制御能力を奪おうとする
自分の頭以上に、体が覚えていた怒りだ
おちつけ、落ち着け…
「悪魔だあああああッッッ」
太陽が、私とひなたのつたえるようにそう叫ぶ
わかってる。わかってる。わかってる
私の頬に、血管が浮き上がる
私の全てを奪った、悪逆非道の悪魔を今
「_殺す」
私はすぐさま目の前の悪魔へ襲いかかる
声に感じた違和感など、とっくに忘れていた
ひなたも、向こうから走ってきている
私より、太陽の剣が悪魔の元へ早く到達するだろう
「この剣はすげえんだぜ!!岩でも宝石でもきれねえもにはネェッッッ」
そう言って太陽は飛びかかる
無駄も隙もない、鍛錬された素晴らしい剣術である
そんな素晴らしい剣技を、まだ頭のない悪魔はゆらりと避ける
いや、まだ頭がないと言ったら語弊がある
もう口までは生成されている。少々気持ち悪い状態であるが。
しかし太陽も避けられるのは想定内だったらしく、着地するとすぐに次の技をを繰り出した。
しかし悪魔はそれをゆらりと回避する
もうほとんど顔も出来上がった悪魔
私は即座に、切り掛かる太陽の援護姿勢に入る
私たちに背中を向けた悪魔が、ゆっくりと天を仰ぐ
太陽は切り掛かるのをやめ、その場で構える
何度もいうが、無駄も隙もない素晴らしい剣技である。
「なんだァ?天を仰ぐのは基本、敗者がやることだぞ?」
太陽の挑発
「じゃあ、俺に勝利したと思っておけば良い」
そう言って悪魔は振り返る
「へえ。随分と整った顔じゃねぇか!」
そう言うと太陽hq切り掛かる
待って。
そういう暇もなかった
ぶん、と音を立てて私の横を高速で何かが通る
振り返る。
そこには木の幹に押し付けられた太陽の姿
失神しているのかぴくりとも動かない
「太陽!!!!」
ひなたが駆け寄る
「おせぇんだよ、雑魚が。」
太陽の方に目をやっていた悪魔がこちらをみる
「ひさしぶりだなぁ」
やめろ、やめろ、やめろ。
その声で話すな。
黙れ、消えろ、だまれ、黙れ、だまれ、
「元気にしてたか?」
__『かっけぇだろ!』
やめて
__『じゃあ、焼くのはお前のほうだな』
__『地獄で眠れよ。…いいや、一緒に踊ろうか』
なんで…
「さくまッッ」
悪魔は、さくまの声をしていた
悪魔は、さくまと同じ話し方だった
悪魔は、さくまとおなじ姿だった
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