第9話 影の支配者たち

山本は情報をもとに、街の裏路地へと足を踏み入れた。

薄暗いネオンの下、数人の若者がたむろしている。彼らが翔太を苦しめていた不良グループの一味だ。


「田中翔太のことを知ってるか?」

山本は低い声で問いかけた。


不良のリーダー格と思しき男が冷たく笑った。

「なんだよ、探偵ごっこか? あいつは俺たちの金を払わなかっただけだ。別に殺したりなんてしてねぇよ」


しかし山本は目を逸らさなかった。

「お前らが何をしたのか、翔太はどんなに怖かったか。誰も助けてくれなかったんだ」


沈黙の中で、リーダーの表情がわずかに変わった。

「……あいつは弱すぎた。俺たちも困ってるんだ。お前にわかるかよ、そんなこと」


山本は静かに言った。

「理解したい。だから話してくれ。真実を」


その夜、山本は不良グループの事情と、翔太を追い詰めた過程の断片を掴んだ。

事件は単純な暴力事件ではなく、複雑な人間関係と社会の闇が絡んでいることを。


彼の探偵としての戦いは、ますます深みへと誘われていく。

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