第5話 静寂の壁

翌朝、山本は改めて中学校を訪れた。

校舎の廊下は昨日よりも一層静まり返っているように感じられた。


彼はまず、担任の高橋先生に面会を求めた。

高橋は中年の男教師で、目の奥に疲労と葛藤の色が見えた。


「田中君の件で、お話を伺いたいのですが」

山本が切り出すと、教師は一瞬躊躇した。


「正直、学校としては深く立ち入るのは…難しいのです。子ども同士の問題と片付けられてしまう部分がありまして」

高橋の言葉には、どこか悔しさと無力感が滲んでいた。


だが、山本は諦めなかった。

「では、田中君が最後に誰と一緒にいたか、ご存じですか?」


高橋は視線を落とした。

「佐藤君の他に、生徒会長の村上君も関わっていたと聞いています。彼は厳格で、クラスの秩序を重んじる生徒ですが…」


山本は心の中で思った。

「佐藤だけでなく、村上か……」


彼はさらに深掘りを決意した。

沈黙に覆われた学校の中で、少しずつだが真実の糸口が見え始めていた。

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