第3話 沈黙の真実

山本が手にした日記のページは、日を追うごとにその内容がより深刻さを増していた。


「今日は教室で、また『集団無視』をされた。誰も僕に話しかけてくれない。机の上に紙切れが置かれていた。そこには『消えろ』とだけ書かれていた。」


「夜になると心が苦しくなる。母さんには言えない。言ったら迷惑かもしれないと思うと、余計に孤独を感じる。」


そして、その次のページに目をやると、こんな一文があった。


「佐藤が僕にイヤリングを投げつけてきた。笑いながら『お前は弱いからこれで目立っていろ』と言った。イヤリングは僕のおばあちゃんからもらった大切なものだった。傷ついたのは物だけじゃない。」


山本はペンを取り、静かに書き込みながら思った。

「このイヤリングは何かの象徴かもしれない。被害者の心の支えであり、同時に加害者の標的となったものだ」


さらに進むと、日記にはこう続いていた。


「先生に相談したけど、『子ども同士のことだから』と取り合ってもらえなかった。僕の声は届かない。誰も僕を守ってくれない。」


そして最後のページ。そこには、震える文字でこう書かれていた。


「もう、これ以上は耐えられない。だけど、生きたい。誰か、僕の声を聞いてほしい。」


日記はそこで途切れていた。


山本の胸に重くのしかかるものがあった。

「これはただの自殺ではない。叫びを無視された少年の死だ」


彼は決意した。翔太の沈黙の声を、必ず解き明かしてみせると。

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