第19話 副社長の復讐

「……自馬院長も、あの息子も許せなかった。」

副社長・品川は、まるで呪詛のようにそう語ったという。


「だから……あのプログラムを完成させて、院長をそそのかしたんだ。

“最新の技術がある”って持ちかけて……息子にマイクロチップを埋め込んでやった。

“チップを埋め込めば、オペのレベルが格段に上がる”ってな。」


取調官たちが言葉を失ったその時——品川は薄く笑ったという。


「俺の言葉なんて、あの院長は信用しなかったさ。でもな……博士の言葉なら、簡単に信じてたよ。技術者として有名だったからな。だから、あいつを利用した。……うまくいった。」


僕は震えた。

品川は自馬院長親子への復讐のために、自ら作り出した技術を使い、自分が憎む“医療ミス”を起こした張本人たちの体内にまで、そのチップを埋め込んでいたのだ。


黒岩先生が低く言った。


「……品川は、もう医療人じゃなかった。復讐者だ。」


及川は呆れたように溜め息をつき、こう付け加えた。


「チップで技術が向上する?そんな話、本気で信じる医者がいるのかと思ったが……欲に目が曇った奴は、簡単に信じるらしいな。」


僕は唇を噛んだ。

品川は、自らの正義と復讐心で、技術と知識を武器に変えてしまった。

自分が憎んだ“中途半端な医者”にまで、復讐のために利用するために——。


「……だからって、許されることじゃない。」

僕はそう心の中で繰り返すしかなかった。

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