第17話 副社長の供述

副社長・品川は、取調室で観念したように、静かに話し始めたらしい。

まるで、自分の過ちをようやく受け入れたかのように——。


「……最初は違ったんだ。」

その言葉に、警察関係者は一瞬耳を疑ったという。


「もともとは……学習を継続できるように、“集中力を高めるマイクロチップ”の開発をしていた。微弱な電流を流して、レンタル後も知識を活かして本物の医療従事者になれるように……夢を諦めさせないための補助装置としてね。……それが、最初の目的だった。」


僕はニュースを通して、その供述内容を知り、胸が詰まる思いだった。

品川にも“人を助けようとした過去”があったのか、と。


だが——品川はこう続けたらしい。


「……でも、あの事件があった。……娘のことがあってから、どうでもよくなったんだ。

医者なんて信用できない。中途半端な奴らが娘を殺したと思った。……だから切り替えた。

そういう連中を利用してやろう、と。

命を軽く見る奴らを“使って”、復讐してやろうと——。」


自暴自棄と憎しみが、品川を変えたのだった。


「……自分でも、どこで間違ったのか分からないよ。」

品川は最後に、そう呟いたらしい。


黒岩先生は、無表情のまま言った。


「医療の知識は、人を救うためにある。……それを復讐の道具に変えた瞬間、あいつは人間であることをやめたんだ。」


及川徹も、静かに目を伏せていた。


——そして僕は、心の中で繰り返した。

どんな過去があっても、命を利用することは許されない、と。

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