第16話 副社長の居場所

次の日、警察から僕たちに連絡が入った。

副社長・品川が、日本国内にいることが判明したという。

きっかけは——副社長の妻だった。


報道を見て恐怖を感じた妻が、警察に直接連絡を入れたらしい。

「もう限界です。……離婚します。居場所をお教えします。」


彼女はそう告げて、副社長の隠れ家の情報を提供したという。

会社名義で購入していた“保養施設”——実際は、別荘だった。

そこで、品川はひっそりと身を潜めていたのだ。


その日の午後、副社長は警察により身柄を確保された。

別荘から連行される品川の映像がニュースで流れたが、彼は無言のまま、顔を伏せていた。

高級スーツ姿も、整えられた髪型も、その姿を救うことはなかった。


黒岩先生は、それを見てただ一言だけ呟いた。


「……終わったな。」


だが僕は、素直にそう思えなかった。

捕まっただけでは終わらない気がしていた。

副社長・品川の“本当の動機”も、

そして僕たちが巻き込まれた“事件の意味”も——

まだ何一つ、明確にはなっていなかったから。

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