第15話 副社長の過去

「品川は、こう言っていたんだ……」

博士の言葉を思い出しながら、僕は黒岩医師の隣で静かに聞いていた。


「命を軽く見ている奴らなんて、どうなってもいいと。だから、データを取るために利用しようと考えたんだ。」


黒岩が重い口調で続けた。


「副社長・品川にも、深い傷があるらしい。彼の娘が、自馬総合病院の院長の息子に手術を受けたが、残念ながら亡くなった。その経験が彼の心に大きな影を落としている。」


「だからこそ、彼は“中途半端な医者”を嫌い、自分なりの“正義”を振りかざしているんだろう。」


僕はその話を聞き、複雑な気持ちになった。

人の命を預かる立場の者が、家族の悲劇を経て、こんな歪んだ思想に陥ることもあるのかと。


「だとしても、許されることではない。」僕は小さく呟いた。

「どんな過去があっても、命を弄ぶ権利なんて誰にもない。」


黒岩は静かに頷いた。


「その通りだ。彼の過去は、言い訳にはならない。誰かが責任を取らなければならない。そして、僕たちはそれを明らかにする義務がある。」


僕は拳を握り締めた。

復讐でも、正義のためでもなく、ただ真実を求めるために。

それが、僕の新たな使命となった。

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