第11話 一つ星博士

それから数日後——驚くニュースが飛び込んできた。

国外逃亡していたはずの一つ星博士が、日本に戻されたというのだ。

逃亡先で身柄を確保されたらしい。

協力したのは、なんとFBIだった。


僕はその理由を、黒岩先生から直接聞くことになった。

「FBIが?」と驚く僕に、黒岩先生は淡々と答えた。


「……数年前な。FBI本部長の息子の脳腫瘍の手術を俺が担当した。成功率は5%以下だったが、運良く成功してな。……その恩返し、ってやつだ。」


「……先生、そんなことが……」


黒岩はわずかに笑った。


「別に見返りなんて期待していなかったけどな。まぁ、役に立ったなら良かった。」


本当にそれだけのことのように話す黒岩先生に、僕は何も言えなかった。

命を救った恩返しが、今回、自分自身の命に繋がった——そう思うと、ただ言葉を失った。


一つ星博士は、すでに日本に到着しているという。

だが、その顔も本当の動機も、まだ誰にも明かされていない。


逃亡先で、彼は何を考えていたのか。

そして、何のためにあんなチップを開発し、埋め込ませたのか。


——すべては、これからだ。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る