第9話 謝罪会見
しかし次の日——僕たちが動き出す前に、事態は急展開を迎えた。
ノーレッジ社の代表が、突然の緊急記者会見を開いたのだ。
会場に現れたのは、社長・能年怜太だった。
まだ若く、清潔感のある人物。だが、その表情は青ざめ、硬直していた。
「この度は、弊社が提供するブレインレンタルサービスにおいて、多くの方にご迷惑をおかけいたしましたことを、心よりお詫び申し上げます。」
能年社長は、深々と頭を下げた。
そして、次の言葉で会場はざわついた。
「……弊社の開発責任者である一つ星博士と、副社長の品川が共謀し、学習プログラムを改ざん。ブレインレンタル技術を、他の目的で不正に悪用していたことが発覚いたしました。」
——まさか、開発者と副社長が。
能年社長は、震える声で続けた。
「……私は、その事実を一切知らずにいました。しかし、知らなかったでは済まされません。責任は、私にあります。被害に遭われた皆様には、誠心誠意、謝罪と賠償をさせていただきます。そして——全てが解決した後、社長職を辞任いたします。」
再び、深く頭を下げる能年怜太。
カメラのフラッシュだけが、無言の時間を照らしていた。
病院の待合室で、その会見をテレビ越しに見ていた僕は、唇を噛み締めた。
これで本当に“すべて解決”するのか。
一つ星博士、品川副社長——そして“彼らが狙った目的”は。
隣で静かに会見を見つめていた黒岩が、ぽつりと言った。
「……奴らが勝手にやった、ね。本当に、そうだといいがな。」
そして及川徹も、モニターから目を離さず呟いた。
「このまま終わるとは思えないよ。」
僕はただ、強く拳を握りしめた。
——戦いは、まだ終わっていない。
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