第8話 結果報告

目を覚ましたとき、すべては終わっていた。

黒岩医師が見下ろしていた。

「無事だよ。チップは取り出した。」


頭の中の重さが消えていることに気づいた。痛みも違和感もなかった。

そして、あの奇妙な圧迫感のような頭痛が嘘のように消えていた。


しばらくして、隣に立つ及川徹が、摘出されたチップを手に説明を始めた。

その表情は穏やかだが、声には明らかに警戒が滲んでいた。


「このマイクロチップ、微弱な電流だけじゃなかった。……特殊な電波信号を送り出すことができる設計になっている。しかも、その信号は——感情のコントロールに関係している可能性が高い。」


僕は言葉を失った。


「……感情を、操作できるってことですか?」


及川は頷いた。


「具体的に何を狙ったものかはまだ断定できない。恐怖心か、衝動性か、あるいは判断力か……。何かのデータ収集のためかもしれないし、他にもっと大きな目的があるのかもしれない。……調べる必要があるな。」


及川の目は、今や科学者のそれだった。

冷静で、鋭く、そして敵を見据えている目。


黒岩医師は短く言った。


「……ノーレッジは、医療関係者限定で“何か”を試している可能性がある。普通の試験用知識なら、感情制御なんて必要ないはずだからな。」


僕は、ベッドの上で静かに決意した。

「……僕も、調べます。あの会社で何が行われているのか知りたい。」


黒岩と及川は視線を交わし、そして頷いた。

こうして僕は、この二人と共に——ノーレッジの“真実”を暴くための調査を始めることになった。

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